ベネッセ教育総合研究所
キャリア教育再考
IPUコーポレーション
チーフディレクター
松高 政(まさし)
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フリーター観と進路決定

 フリーターに対する大学生の認識について、私たちも調査を行った。03年7月に全国8大学の協力で、同じ学生に、1年次(01年)と3年次(03年)に同じ質問をした(有効サンプル数=1336 有効回収率=61%)。フリーターについて八つの意見を挙げ、賛否を「そう思う」から「そう思わない」までの4段階から選んでもらうという内容だ。八つの意見は、日本労働研究機構(現労働政策研究・研修機構)による01年2月のフリーターに関する調査を参考にした。
 さらに、1年次と3年次とも「卒業後どのような進路を考えているか」と質問し、「一般企業への就職(業種・職種などもある程度特定)」「一般企業への就職(業種・職種などは未定)」「公務員や教員」「大学院進学」「まだあまり考えていない」「その他(家業など)」の中から選択してもらった。
 フリーター観と進路決定状況の関係をまとめたのが図表2である。

図表2 卒業後の進路とフリーター観

図表

数字は、「そう思う」「ややそう思う」と回答した割合の合計

 「『自分探し』のためにいいことだ」「夢のためならかっこいい」などフリーターを肯定的に捉える傾向は、自分の進路を「まだ考えていない」と答えた学生の間で高く、「一般企業(特定有)」と答えた人との差がはっきりした。しかも3年次になるとその割合は上昇している。そして、3年次で「まだ考えていない」学生の約8割は、「誰でもフリーターになるかもしれない」と思っているのだ。
 3年次の調査を実施したのは7月である。就職活動本番を前にして、進路を考えておらずフリーターを肯定する学生たち。就職という現実的な進路選択の場面になっても、何も選ばない、あるいは選べない、つまり「決めることの先延ばし」の結果としてフリーターになっていくことは、十分に考えられる。
 まずは、学生がどんな課題を抱えて進路選択や就職から遠ざかっているのか、声なき声に耳を澄ますことが求められよう。そして、自分の内面にある不安が「決めることを先延ばしにしている」ことを学生が自覚し、不安を取り除こうとするよう促すことである。雇用環境が厳しいことも確かだが、進路や就職を考えることから自分を遠ざけているのは、やはり学生自身なのだ。



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