ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる個人情報の保護と活用法
 
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取得が最適な行動指針に

 取得準備の過程では、学内の様々な課題を解決した。まずは、書類の山積み状態を解消する整理整頓の徹底である。コピーの裏紙使用も問題になった。それまでは環境保護の観点から推奨されていたが、内容確認を徹底して、個人情報が記載されているものは使用せずにシュレッダーにかけることを義務付けた。
 学生の個人情報を含む大量の書類を保管するために、専用の倉庫を設置。信頼できる業者に廃棄を依頼し、適正に処分した旨を示す証明書も提出させることにした。リース期限切れパソコンのハードディスクは、専用ソフトを導入してデータを完全に消去してから返却。学内LANで共有されているデータファイルについても、ファイルサーバーへのアクセス制御や個別のデータファイルへのパスワード設定などを徹底し、漏洩リスクの軽減に努めている。
 Pマーク取得の効果については、「取得したことより、取得までのプロセスを通して、全教職員の意識が確実に向上したことの意義が大きい」と村山室長は話す。実地審査の時に、審査員からどこで何を聞かれても戸惑うことがないように全教職員が心がけておくためにも、意識改革が必要だったわけだ。その成果は取得後も生かされ、様々な活動の中で個人情報保護が心がけられるようになっている。
 Pマークは、2年ごとの継続審査が義務付けられている点も、学内の意識や行動規範を維持する上で役立っているようだ。教職員が毎年受講する研修の内容は、常に最新の情報を反映したものにブラッシュアップされるため、受講後の理解度テストを通して意識の向上と行動の振り返りが可能になる。
 Pマークを取得しなくても、大学として個人情報保護法に対応することは可能だ。しかし村山室長は、「これまでの経験がなければ、法律が施行されても、具体的に何をすればよいのか戸惑ったことだろう。その意味で、Pマーク取得は個人情報保護に関する『最適な行動指針』になり得るのではないか」と語る。
 取得までの過程で人的労力は欠かせないが、必ずしも大規模な設備投資が必要なわけではない。この点も産能大学が取得に踏み切った理由の一つだ。Pマーク取得は、学内の意識を向上させるとともに、外部からの信用を高める効果も生んだという。



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