ベネッセ教育総合研究所
特別企画  レポート 05年度私立大学 志願状況分析
 
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薬学部で志願者減少が顕著

【理学部系統】
 長く続いていた人気が2〜3年前から衰えてきた。女子の理科系志望者の関心が、薬学・バイオ・環境などに移ったことも要因の一つだろう。それでも05年度は、04年度までに比べて減少率が少ない方である。青山学院大学、名城大学、近畿大学で志願者が増加したが、東京理科大学、東邦大学、早稲田大学、京都産業大学などでは減少が著しかった。

【理工・工・メディア学部系統】
 この系統は就職状況がよいので、不況期は一貫して人気を集めてきたが、近年では鈍化している。05年度入試でも前年度同様に全系統の平均指数をやや下回る形となった。この系統は学科ごとに募集する大学が多いので、学科別の志願者を集計してその増減を調べると(図表3)のようになる。電子・情報、電気工・通信工が意外に志願者を減らしている。これまで、高度情報化社会に支えられてこれらの学科は高い人気を維持してきたが、理工学部のほかに、情報関連の技術が学べる学部が増えたことから、志願者が分散したと考えられる。

図表

【農・生命科学部系統】
 かつてバイオテクノロジーやクローンなどで受験生の大きな関心を呼び、志願者も年々増加した。しかしそうしたブームも下火となり、人気にやや陰りが出てきた。東海大学、立教大学、近畿大学の志願者増が目立った。

【医学部系統】
 例年同様、志願者数が増加している。関心の高さは国公立大学でも同様である。04年度より志願者が減少した大学は少ない。ただし募集人員はそれほど多くないため、志願者数そのものはあまり多くない。もちろん入試の難易度は常に高い。最近はセンター試験利用方式に出願する受験生も多くなった。

【看護・医療・健康学部系統】
 例年高い指数を示し、05年度入試では特に顕著である。看護学部・学科の新設が続いているのは、卒業後に資格を生かした職業を選択しようと考える女子受験生が増えているからであろう。医療系統も同様である。健康系の学部は最近、いくつかの大学で新設された。健康志向の高まりを受け、関連した学部・学科に関心が集まっているようだ。

【歯学部系統】
 医学部からの志望変更先として受験生層が重なっているため、医学部の志願状況とよく似ている。

【薬学部系統】
 04年度に7大学、05年度は6大学で薬学部が新設された。志願者指数は93.9と振るわないが、集計時点では、一部の新設大学の情報が入手できず、それらを加えれば、ほぼ04年度並みの志願者数になるだろう。文科省の調査では、薬学部の学生の57.9%を女子が占める。多くの志願者が集まるのは、女子の資格志向によるものといわれている。

【生活科学・家政学部系統】
 女子大が中心の学部系統である。管理栄養士の資格を得るためのコースのほか、食物・栄養・家政経済・健康・住居・環境・デザインなどの要素を組み合わせたコースを設置する大学が目立っており、今後は大学間で人気格差が広がるだろう。

【教員養成学部系統】
 私立大学には教育学部はそれほど多くないが、それぞれに特色のある学部・学科を構成している。文教大学、玉川大学、常葉学園大学、佛教大学などが志願者数の多さ、増加率の大きさで目立っている。
 多くの国立大学に教員養成学部が設置されているが、05年度入試では国立大学の志願者は大幅に減少した。これは、教員養成系学部の人気の低下というより、センター試験の5教科7科目受験に対応できない受験生が国立大学を敬遠する傾向が、この系統に顕著に表れたというべきで、私立大学の状況はそれをカバーしていると見てよいだろう。

【芸術・デザイン学部系統】
 芸術系統の中にデザイン部門が入ってきて、就職面でも人気が出ている。コンピュータグラフィックスを勉強することができる大学が増えた。こうした新しい大学の動きに敏感に反応してか、全系統の平均指数とほぼ同じ比率を保っている。

【スポーツ学部系統】
 従来の体育学部は競技者の養成と競技指導者の養成が中心だったが、最近は競技者としての能力を問わず、健康面からスポーツを研究したり、社会学や経営学の視点からスポーツを捉える研究が注目されだしている。それらのニーズに応えてできた新しい形の体育系学部が、スポーツ学部である。受験生の人気も高まり、04年度に引き続き志願者増となった。



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