ベネッセ教育総合研究所
伝統学部改革の断面図 第1回 法学部
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5コース制を導入し、法曹以外も視野に―明治大学

 明治大学では、法曹以外の進路も視野に入れて法律学科の改革を推し進めている。
 明治大学法律学科では、05年度から新たに「法曹」「公共法務」「ビジネスロー」「国際関係法」「法と情報」の5コース制を導入、カリキュラムを大幅に改定した。2年次にコース予備登録を行い、3年次からいずれかのコースに所属して専門教育を受ける。法学部長の土屋恵一郎教授は、「卒業後のビジョンを明確に描けるようなコース制を採用することで、学生が法曹以外の道に進んでも、様々な問題に柔軟に対応できる能力を育てることが狙い」という。
 新しいカリキュラムでは、低学年次から将来の進路(キャリアプラン)を想定して学習計画が設計できるように「キャリア講座」などを開講し、自分のキャリアプランに沿ったコース選択を促す。同時に、法律学の基礎力と語学力をしっかり身につけることも重視する。
 ここで、法曹以外の分野も視野に入れたコースのいくつかを紹介しよう。ビジネスロー・コースは、コンプライアンス(法令順守)を重視した企業の経営のあり方について学ぶ。このコースでは、商学部との連携も計画されている。土屋教授は、「学部の垣根を超えて連携することで、単位互換やダブルディグリー(複数学士号)といった履修形態も進めたいと考えています。こうした新しい方向性を打ち出すために、企業法務といった一般的な名称でなく、あえてビジネスローというネーミングにしました」と言う。
 国際関係法コースは、国際関係法だけでなく、各国・地域の文化も学ぶのが特徴だ。「法学部には、法律の専門家だけでなく、様々な国や地域の文化を専門とする教員が豊富に揃っています。このメリットを最大限に生かし、国際関係法と異文化理解を組み合わせた新しい教育コースを作りたい」。
 法と情報コースは、情報技術と社会との関わりを理解した上で、情報技術関連法だけでなく、高度な情報処理技術を習得することを目的としている。「情報化の波が社会の隅々まで行き渡り、表現の自由、個人情報の流出、デジタルコンテンツの著作権といったITをめぐる法律問題も起きています。法曹の世界でも、判例データの検索をはじめとして、情報処理技術が求められる場面が多くなっています。これまで、法学部で扱う情報というと、IT社会における法と倫理の問題が主体でしたが、本コースでは卒業後、法曹界で必要とされる情報の知識だけでなく、IT技術者としても通用する高度な情報処理技術を身に付けさせます」と土屋教授は言う。
 これらの法学部のあり方について土屋教授はこう語る。「法学部は、社会の変化によって起こる様々な問題にチャレンジできるキャパシティを持った学部だと思います。ただ、常に動いていること、改革していることを社会に発信しなければ生き残ることはできない。同時に、社会の制度や仕組みに対する洞察力と批判的精神を持った市民を生み出す、という法学部の歴史的な役割も忘れてはならない。これは、将来も変わらない法学部の基本理念です」。


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