ベネッセ教育総合研究所
伝統学部改革の断面図 第1回 法学部
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法科大学院に進学しない学生のケアが必要

 法学部は、社会科学系学部の中では受験生の学力レベルがトップクラスと言われている。また、弁護士や裁判官、検察官といった法曹はほとんど法学部出身者で占められてきた。一方で法学部出身者は、行政機関や民間企業からも法律の基礎的な素養を身に付けている人材として歓迎され、「つぶしの利く学部」とも言われてきた。
 法科大学院の開設は、その法学部の存在意義を揺るがしかねない一大制度改正となった。法曹を目指す者は、原則として法科大学院を修了することが前提となり、学部の4年間プラス2〜3年の教育を義務づけられるようになった。
 法科大学院では、法学部のみでなく、理系も含めた多様な専門分野の人を受け入れる。とは言え、多くが法学部出身者で占められるであろうことは想像に難くない。そうである以上、法学部は法科大学院を目指す学生に対する準備教育をしっかり行う必要があると言えるだろう。
 その一方で、法科大学院進学を希望しない学生に対する教育をどうするかという問題も出てくる。法科大学院開設以前も、法学部の学生で司法試験に挑戦する者の数は限られており、多くは公務員や一般企業に就職していた。それが、法科大学院開設によって法学部から法科大学院へというルートを歩むことが半ば常識と解釈されるようになる可能性も高い。なぜならば、大半の法科大学院の入試は法学部出身者を主な対象とした2年制の既修者枠を設けている上、法学部から一人でも多く法科大学院に入学させたいという意向も強いからだ。
 そのため、今後は法学部を卒業して法科大学院に進学しない者が「なぜ?」と尋ねられることが多くなることも予想される。残念ながら、多くの大学で、法科大学院に進学しない学生に対する教育や就職のケアをどうするのかという明確な方向性は、示されていないのが現状だ。


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