ベネッセ教育総合研究所
誌上セミナー 大学の財政と経営 第1回 ファンディング・システムの変化ついて理解し、備えよう
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3 設置形態の多様化もファンディングに影響

 答申に示された公的ファンディング政策のシフトの背景には、高等教育に関する四つの変化があります。その第1が、学生の多様化です。エリート、マス、ユニバーサルの各段階の学生は、それぞれ学習目的、性別年齢別構成、出身階層、職業経験の有無などが異なります。従って、高等教育がこれらのどの段階にあるかでファンディングのあり方は当然違ってきます。
 第2は、設置形態の多様化です。国立大学は2004年4月の法人化で設置形態が変わり、自立的な経営が強調されています。学校法人が設立している私立大学も、公設民営方式など経営の実態は様々です。また構造改革特区では、株式会社立の大学と大学院も開設できるようになりました。これら設置形態の多様化に伴って、ファンディングも変化せざるを得ません。
 第3に、ファンディング目的の多様化を挙げることができます。まず教育に関するファンディングの目的ですが、これには育英目的と奨学目的の違いがあります。一方、研究のスタイルも、国際競争、国際協力、学際的研究、大学間協力など多様化しています。このいずれが対象かという観点をファンディングに持ち込めば、学部や講座などの単位ごとに一律に支給する従来のスタイルとは必然的に異なってきます。
 これら教育研究だけでなく、大学の経営にも財政援助が行われることがあります。私学振興助成法の目的である(1)私学の教育条件の充実(2)家計負担の軽減(3)経営の安定、の三つのうち、(1)と(2)については、高等教育専門家の間である程度のコンセンサスがありますが、(3)の目的に基づく助成には異論もあります。つまり、私人の自由意思で設立された私学に公的資金を投入するのはおかしい、という主張です。しかしこれまで高等教育機会の拡大を担い、社会に有用な人材を送り出してきた私学の役割を適正に評価すべきではないでしょうか。大学経営の安定なくして(1)(2)の目的を達成できないという考え方もできます。
 第4に、ファンディングの方法の多様化が挙げられます。助成方法としては、機関助成と個人助成という従来の区別に加え、近年は、その中間に位置するプロジェクト助成も増えています。
 これら高等教育の四つの背景変化によって、ファンディングのあり方が変わってきているわけです。


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