特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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[問題定義] 新しい競争力が求められる環境変化

高等教育改革の進展と
人材育成像を起点とした競争力


ベネッセ教育研究開発センター 主席研究員 山下仁司 研究員 樋口健

ポスト2012年という視点

各種政策の審議が2012年を目標に進行

 高等教育の改革に関する検討の現状を見たとき、2012〜2013年を一つの節目と考えることができる。その理由を3つ挙げる。
 第一に、さまざまな政策審議が2012年前後を目標時期として行われていることである。2008年7月に閣議決定された教育振興基本計画は、「この5年間を高等教育の転換と革新に向けた始動期間と位置づけ、中長期的な高等教育の在り方について検討し、結論を得る」としている。
 同年12月に中央教育審議会から答申された「学士課程教育の構築に向けて」は、教育振興基本計画の具体化に必要な取り組みを示すものとして位置付けられている。同じ年の9月には、同基本計画と、学士課程答申に先立って出た「審議のまとめ」の内容を具体化するため、「中長期的な大学教育の在り方について」が諮問された。
 現在の中教審大学分科会の主な審議テーマと背後にある改革の課題は、図表1の通りである。

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図表1:中央教育審議会で検討されている大学・高大接続関連の課題

 第二の理由は、2004年に開始された認証評価が2011年から2巡目に入ることである。現在、中教審大学分科会の質保証システム部会で検討されている質保証のための制度改革では、「設置基準・設置認可・認証評価」を三位一体にした厳格化がポイントの一つである。2巡目の認証評価では、より厳格になる大学設置基準に準じる形で大学が運営されているかどうかが、問われることになる。
 大学設置基準がどのように改正されるのか、現在もまだ審議は続いているが、例えば2010年2月の中教審大学分科会では、社会的職業的自立に関する指導(キャリアガイダンス)について規定し、2011年度から施行する旨の答申がなされた。大学生の就職状況が厳しい中、「学士力」とリンクする形で、大学の組織全体を挙げて学生のキャリア意識とエンプロイアビリティーをいかに向上させるかが問われることになる。
 また、大学情報の公開の促進については、経営情報にかなり踏み込んだ形での公開が検討されている。
 第三の理由は、学生募集にかかわる入試改革の検討が2012年までに行われることである。高校の次期教育課程は2013年度入学生から実施(理数系科目は1年前倒し)される。大学入試センター試験や個別学力検査の具体的な内容は、少なくともその前年度までに公表する必要がある。
 それまでの大きな課題として、増加し続ける推薦・AO入試による入学者の学力をいかに保証するかという点がある。2010年9月には、「高大接続テスト」の委託調査の報告がなされ、大学入試改革の議論が活発化することが予想される。
 また、定員割れに伴い経営が悪化している大学の多くが危険水準に至るのも、今後数年間が山場であると、文部科学省は認識している。入試を含む学生募集のあり方全体が、入試制度や認証評価、情報公開の動向によって大きく影響を受けると予想される。
 以上のように見ると、大学改革はあと2〜3年、具体的な方法論が審議・検討され、順次実現に向けて法制化や制度化が進んでいくと考えられる。すなわち、2012年頃までに、新しい環境に備えるべく、各大学が変革を進めることが非常に重要であるといえる。


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