学士課程教育体系化のステップ

佐藤浩章

佐藤浩章

さとう・ひろあき 北海道大学大学院博士課程単位修得退学。2002年より愛媛大学に勤務。ファカルティ・ディベロッパーとして高等教育開発の実践と研究を行う。2009年はイギリスのキングス・カレッジ・ロンドン学習研究所客員リサーチフェローとして高等教育開発を研究。

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学士課程教育体系化のステップ - 3つのポリシーの策定と一貫性構築
愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室副室長、准教授 佐藤浩章
STEP

最終回 カリキュラム評価手法の策定

前回は、学士課程教育体系化を進める作業のうち、
カリキュラム・ポリシーの策定(第4ステップ)について述べた。
今回は、最終ステップであるカリキュラム評価手法の策定について述べる。

第5ステップ:カリキュラム評価手法の策定

組み合わせと使い分けでチェックリストを作成

 第5ステップでは、第2ステップで策定したディプロマ・ポリシー(DP)を卒業予定者は達成しているのかどうか、第4ステップで策定したカリキュラム・ポリシー(CP)に基づいてカリキュラムが機能しているかどうかを検証するために、カリキュラム評価手法を策定する。

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図表1:医学部・医学科カリキュラム・アセスメント・チェックリスト

 2009年度の愛媛大学教育コーディネーター研修会では、学部・学科ごとに「カリキュラム・アセスメント・チェックリスト(以下リスト)」を作成した。これは、「いつ」「誰が」「どのように」カリキュラムの評価を行うのか、評価結果を「どう」活用するのか記載したものである(図表1)。図表2のように、カリキュラム評価手法はいくつかあるが、その中の複数を使い分け、組み合わせてリストを作り上げるとよい。

図表2:さまざまなカリキュラム評価手法

 選択する際の留意点は3つある。1つ目は、領域ごとの複数の評価手法を組み合わせることである。連載第2回で、DPを「知識・理解」「技能・表現」など5つの領域別に策定することを説明した。例えば「知識」の達成度を示すには、レポート、テスト、口頭発表などが適している。「技能」であれば、実験や実習などが適している。複数の領域のDPを設定すれば、評価方法も複数になり、客観性を高めることができる。
 2つ目は、形成的評価(プロセス評価)と総括的評価(アウトカム評価)を使い分けることである。形成的評価とは、学習成果形成過程の改善のための評価等のことをいう。学年の終了段階ごとの評価がこれにあたる。総括的評価とは、学習成果を総括的に把握するための評価のことをいう。卒業段階に行う評価等がこれにあたる。外部評価では総括的評価が求められることが多いが、過程を丁寧に評価する形成的評価も大切にしたい。
 3つ目は、評価主体を使い分けることである。評価主体を大きく区分すると、学生本人が行う自己評価、本人以外が評価主体となる他者評価がある。他者評価は、さらに教員(授業担当教員、ゼミ担当教員、第三者的教員等)、第三者(インターンシップ・実習等の受け入れ先関係者、教育関係企業等)、他の学生による評価に区分される。
 カリキュラム評価を行う意義は、組織、教員それぞれにある。組織にとっては、カリキュラムの強みと弱みが明確になり、改善に向けた検討がしやすくなる。優れたカリキュラムの把握は、教育系外部資金の申請時等にも役立つ。
 個々の教員にとっては、カリキュラム評価を通して、DPやCPを繰り返し意識することになり、ベクトルを合わせて教育に取り組むことができる。方向性を一致させ、適切に業務を分担することによって、効率化が図られる。
 また、カリキュラム評価は、学生の学びを促進する機会にもなる。例えば、「2年次アンケート」や「卒業時アンケート」に答えることによって、それまでの学習を振り返り、自身の成長とその後の課題を認識することができる。


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