VIEW21 2000.10  特集 SIづくりから始まる学校改革

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小池 岐阜高校も、生徒の変化がきっかけとなって、新たな動きが生まれたと言えます。'96年度入学生は、「いい奴らだが力が足りない」という結果に終わりました。卒業後、うちの学校としては初めて学年会で深刻な反省会を開いたんです。私たちの指導がどうして後追いになってしまったのか、徹底的に話し合いました。そこで出てきたのは、今までのように放っておけば成長するという考えではなく、もっと生徒と向き合う時間を確保しなくてはダメだということ。そのためには面談の回数をもっと増やそうということになりました。また基礎学力対策としては、読書指導を取り入れていこうという提案がありました。しかしこういったことは、教師個々の取り組みでは追い付きません。これまでは教師個人の力量で勝負してきましたが、集団指導体制をつくっていく必要性を認識しました。

社会の中での学校の役割を明確にする

写真 情報交換会 高田 先生方の中で理想とする生徒像と、現実の生徒像とのギャップが一気に生まれたのが、どうも'96年頃ということのようですね。先日、ある私立校の先生と話をしていて「その頃から異邦人が入りだした」と言ったら、「異邦人どころか銀河系外だ」と言い返されました(笑)。今の生徒の実像を捉えてみると、権利と自由はよく分かっている。しかし、その反対概念の義務と規律が全く理解できておらず、社会化もうまくいっていない。そういう生徒が増えているように思います。その背景を探ってみると、筒井先生も指摘されたように、未来が見えにくい状態に子どもたちが置かれていることがあるのではないでしょうか。そして教師の側も未来を語りにくい状況にある。将来のために今努力することが大切なんだよという価値観が、今の生徒には通用しなくなっています。

上原 私も生徒が変わってきたと感じています。しかし、社会状況が変化しているのだから、生徒の姿が昔と異なるのは必然的だと思うんですよ。これまで教師は学校の中だけのことに捕らわれがちで、生徒が大学を卒業した後の雇用環境はどうなっているかといったことには、あまり関心を払っていませんでした。しかし今の社会はどんな方向に動いているのか、どのような人材を求めているかをきちんと分析して提示できれば、生徒にとっても指針になるのではないでしょうか。それは各校が進むべき方向性を見いだすことにもつながります。そこで私たちは、現代社会の中での高校の役割は何か、その中でも特に修猷館高校に求められている役割は何かを、校外の方の声も参考にしながら模索する作業が必要だと考えました。
 学校としての在り方を明確にすることは、違う面からも重要です。我が校は県立高校ですから、当然人事異動があります。赴任してきた先生がすぐに本校のスタイルを把握するためにも、指導方針が明示されていた方がいい。
 また、従来うちの高校は学年ごとの独自性が強く、2学年と1学年では全く方向性が違うこともありました。そういう中、約4年前に学校長と教師がメンバーとなって「修猷館を語る会」を開いたんですが、本当に様々な意見が飛び交いました。そこで、それぞれの先生方が信念を持って教育の場に臨んでいるのは素晴らしいことだが、学年であまりにも差があるのはまずいのではないかということになったんです。保護者や地域に、学校としての一貫性がないとも受け取られかねないですからね。「地域の中の学校の役割」という視点は大事だと思います。

小池 私も地域からの期待には応えなくてはいけないと思います。本校は長年、文武両道を標榜しており、地域の方にもそれを認めていただいています。例えば成績不振の生徒に担任が「部活なんてやっている場合じゃない」と指導すると、翌日保護者からクレームの電話が入るような風土があるんです。もちろん一方で、進学実績は確実に求められますが。しかし単に大学に入学させるだけでなく、人間として大きく育てて欲しいという要望はひしひしと感じます。これから学校づくりを進めていく上でも、その部分は大切にしていきたいですね。

 これまでのお話から、先生方の高校のような進学校でさえ、教師が一丸となった対応が必要となる程に生徒の変化を感じていること、SI構築に着手されている背景がよく分かりました。


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