VIEW21 2002.2  IT Introduction 情報技術が学校をどう変えるのか

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 また、国語では、作者が生きた時代についてまとめた動画やインターネットから収集してきた写真を、授業の導入として生徒に見せている。作品の時代背景や作者の境遇を視覚的に理解でき、単に文章を読むよりも生徒の理解度が深まった。保健の授業でも、身体や健康に関する様々な画像や図を駆使している。黒板を使う授業に比べ、生徒の授業に対する姿勢が積極的になった。
 「『IT革命』が成功したのは、最新の機器を導入したことも大きいでしょう。ただそれ以上に、英語の成功例を通して『ITは授業に取り入れる価値がある』との認識が校内に広がったのが一番だと思います。今では教師全員が、ITを活用する中でどう授業を活発で効果的なものにしていくかを、以前にも増して考えるようになりました。ITは教師の創造力をさらに広げる可能性を持ったツールだと思います」(大竹先生)

予習・復習などの家庭学習にもITを活用

 このように、ITによる改革を積極的に行っている同校。現在では、授業だけではなく保護者への情報提供として、メールの配信も行っている。また、予習・復習などの家庭学習も、インターネットを介してフォローできるようなシステムづくりを進めている。既に自身のホームページで実践している松崎先生は「私の過去のIT授業はすべてホームページで閲覧できます。病気や部活の試合などで授業を欠席した生徒には、遅れを取り戻せると好評です」と効果を語る。
 しかし、これには生徒の家庭環境により、受けられる指導が違ってしまうという課題が残る。その点について、広報を務める佐藤賢士先生は「休み時間や放課後に、校内のパソコンルームを開放したり、生徒個人のPDAをもたせることでカバーしていきたい」と説明する。
 「ITは各生徒が自分のペースに合った進度で理解を深めることができるところに、存在価値があると思います。ですからパソコンに苦手意識を持っている生徒へのフォローは欠かせないですね」(佐藤先生)

IT授業の今後の課題、
セキュリティ確保など専任管理者の必要性

 同校では、情報機器のメンテナンスやセキュリティ管理の整備が、今後の課題だ。現在は、一部のパソコンに詳しい教師が、校内サーバーの管理者として、メンテナンス等を引き受けている。しかし、大竹先生は「セキュリティやメンテナンス面をさらに充実させるためには、やはりIT専任の管理担当者が必要になってくると思います」と説明する。授業中に発生したマシントラブルや、生徒の技術的な質問に対応するため、アシスタント教員を配備してはという意見も出ている。
 機器の導入や管理専任者の確保など、IT導入には様々な課題が伴う。それでもITは授業に取り入れる価値があると、同校の教師たちは断言する。
 「ともするとコンピュータは非人間的と思われがちですが、実際使ってみると、授業やメールのやりとりを通して、生徒との距離がぐっと狭まることに気付きました。ITは人と人をつなぐ道具なんだと実感しましたね」(佐藤先生)
 今後は、各教師がつくった教材をデータベース化して共有できるようにし、授業内容をオープンにしていきたいと大竹先生は考えている。
 「他の先生の授業内容を見ることは、とても刺激になります。お互いの良い部分を参考にし、さらに密度の濃い授業ができるようになればいいですね。今やITは授業改善のツールとして欠かせないものとなっています」(大竹先生)

茗溪学園中学校高校
1979年創立。普通科の共学校で高校の生徒数は、1学年約230名。'01年度入試では、東京大5名、一橋大2名、筑波大10名、早稲田大32名、慶応大22名など、多くの合格者が輩出。
住所/茨城県つくば市稲荷前1−1 電話/0298(51)6611


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