VIEW21 2002.2  Power for the Future
 生徒と一緒に考えたい「生きる力」

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大学3年での突然の進路変更、そして渡英。
失敗を恐れるより目の前のチャンスに賭けました

 卒業後、ある建築家のもとでアルバイトをしていた私に転機が訪れたのは、1996年、26歳のとき。若手建築家向けのコンペに参加し、佳作入賞を果たしたのです。そしてそのコンペの受賞パーティーで、今の建築事務所のボスである二人の建築家に出会いました。国際客船ターミナルのコンペで優勝した彼らは、建築の世界では一躍時の人。私は意を決して彼らに近付き「是非一緒にこのプロジェクトをやらせてほしい」と恐れ多くも言ってしまったのです。
 「OK」とは言ってくれたものの、それはただのリップサービスだったと思います。でも、私は次の日から猛烈なアプローチを開始しました。英語もろくに話せないのに、電話で再度自分の思いを伝えたり、FAXでプロジェクトの内容を問い合わせたり……。「自分のことを忘れられては困る」と頻繁に連絡を取りました。一方で渡航に必要な書類を揃えたり、英会話を習ったりと着々と準備を進めました。途中で、金銭面で頼みの綱だった奨学金の審査に漏れたことが分かったのですが、ボスには言えるはずもありません。「なんとかなる」と自分に言い聞かせ、4か月後、半ば強引にイギリスに押しかけていきました。ボスはこのとき初めて、私が本気だったと分かったようです。
 突然進路変更したり、強引にイギリスに渡ったりという私の無謀な行動に「不安じゃないの?」って驚く人もいます。でも僕は「失敗してもいいや」って思うんです。困難に飛び込んでいくのは、決して自信があるからではありません。失敗しても命まで取られることはない。だから少しでもチャンスがあれば、どんどん挑戦していきたいんです。失敗を恐れず、思い切って一歩踏み出してみる。私にとっての生きる力があるとすれば、この失敗を恐れない意志がそれなのかも知れません。

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