VIEW21 2002.2  新課程への助走
 新課程で高校の「教科指導」はどう変わるのか

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中学校の変化を踏まえた
〈教科指導の新しい工夫〉

 中学校では'02年度から新課程となり、従来とは教科指導も大幅に様変わりする。ここでは、「英語」「数学」の2教科を例に、中学校における教科指導の変化をどのように捉えれば、高校における教科指導にうまく活かしていけるのかを考えてみたい。


【英 語】
中学校では単語や文法事項の暗記よりも
「話す」「聞く」力の育成を重視する

 新課程における英語指導を読み解くキーワードとなるのは「コミュニケーション」である。現行課程においても英語の4技能(「読む」「書く」「話す」「聞く」)の習得は強く意識されてきたが、新課程ではその中の「話す」「聞く」がより重視される。これは高校での指導よりも、中学校での指導において色濃く実践されていくのではないだろうか。実際に'02年度から中学校で使われる教科書は7社から出版されているが、どれをとってもカラフルで、生徒の興味・関心を引くように工夫してつくられている。題材もユニークなものが多く、アニメのキャラクターや話題の映画を素材にしたものも多い。これらの教科書を使って、中学生の「話す」「聞く」力をより一層伸ばす授業が行われるわけだが、注目すべきは中心となる学習のスタイルが単語や文法事項を暗記する「作業的な学習」から、日常的な場面の中で英語を使用する擬似体験を通して語学力を身に付ける、「体験的な学習」へと大きく変わろうとしている点である。新課程における中学校の指導の変化に関しては、必修単語数の大幅な減少や、文法項目の削除に目がいきがちであるが、知識量の低下に対処する視点以上に、指導スタイルの変化を高校における指導にどのように活かしていくべきかを考える視点を持つことが大切なのではないだろうか。

中学校での指導を踏まえて、指導内容を再構成する

 中学校で「話す」「聞く」を中心にした授業が行われることを受けて、'03年度からは高校でも、「実践的コミュニケーション能力の伸長」を目指して、英語Iの教科書内容が大幅に見直される。訳読教材というよりも、本文の要約文を書く活動やディスカッションなど、オーラルコミュニケーション(以下、OC)の授業内容が大幅に取り入れられることになる。新しい教科書を使いこなすために、高校の授業においてはどのような対策が必要になるのだろうか。

(1) 要約文や意見を書かせる場合は、答えは一つではなくいろいろな見方や考え方があることを理解させ、クラスの生徒の前で発表する機会を増やしてみる。ライティング活動は、書いて終わりではなく、評価を添えて必ずフィードバックする。

(2) 音声重視の授業を展開し、音読活動を多く取り入れてみる。中学校の指導によって現行課程生よりも「話す」「聞く」ことに慣れている新課程生にとっては、教科書の音読活動はそれほど苦にならない。積極的に声を出して読ませることで、教科書の内容理解を深めることができる。

(3) 生徒は文法学習を難解だと感じると拒否反応を示すので、文法説明は最小限に抑え、その代わり、重要構文を取り入れた寸劇を演じさせたり、ペアワークをさせたりして学習内容の定着を図ることも考えられる。


 以上のように、高校における新課程での英語指導に求められているものは、決して特別な新しい学習内容ではなく、今まで英語IやOCで指導していた内容を、有機的に再構成することのようだ。新課程で学ぶこれからの中学生は、今までの中学生と比較して「読む」「書く」の技能は劣るかも知れないが、「話す」「聞く」の技能は優れていることが期待される。新課程における英語教育の成否は、その視点をどう授業の中に活かせるかにかかっていると思われる。


表1 英語における中学校学習指導要領での変更点
取り扱う単語数
現行課程:1000語程度→新課程:900語程度
※必修単語数は、507語→100語と大幅に削減
文法項目
・「理解の段階にとどめる」としている項目に「主語+動詞+whatなどで始まる節」も追加。
・「未来形」という用語が「助動詞などを用いた未来表現」と改められる。
主な追加事項
「挨拶・自己紹介・電話での応答など」や、「家庭での生活・地域の行事など」といった細かな言語の使用場面も例に挙げている。

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