VIEW21 2002.2  新課程への助走
 新課程で高校の「教科指導」はどう変わるのか

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【数 学】
中学校での学習状況が生徒により大きく違う

 新課程で中学校の選択授業数が増加すると、数学を選択した生徒と選択しなかった生徒との間にかなりの学力差が生じることが懸念される。例えば、「2次方程式の解の公式」、「2次方程式に関する文章題」、「1つの文字に置き換えての展開・因数分解」などは、新課程では高校の学習内容である。しかし、中学校での学習内容の延長上にあるため、生徒によっては中学校で選択の時間を活用して、既に学んでいることも十分考えられるのである。こうした学力差に対処するため、入学時に基礎学力テストや中学校の学習内容の到達度測定を行うなどして、早期に新課程生の学力レベル、学習内容などを把握したい。実情に合わせて1年間の指導計画を適切に修正することが対応の第一歩になる。
 また、中学校段階での演習不足による計算力の低下も大きな問題である。計算力の強化・補充を図る取り組みとしては、「数学I」の指導を有効に活用したい。例えば、分数の計算力を強化するために、「数と式」の分野では、文字式の指導の際、文字に分数の数値を代入して計算させるとか、「2次関数」の分野では変数が分数の関数値を求めさせるなどの指導が考えられる。いろいろな場面を通して計算力を付ける工夫を行い、課題プリントや確認テストを実施するなど、教師からの積極的な働きかけが重要なポイントになる。

現行課程では難しい
効果的な指導方法の構築も可能

 新課程では「1次不等式」「平面図形」「空間図形と計量」などが中学校から高校へ移行される。高校での指導を始める前に、中学校教材の分析などを行い、効果的な指導方法を検討したい。例えば、1次不等式については、中学校では具体的な数の大小関係などと関連して不等号を学習している。高校においては、不等式の中の文字や不等式の解の意味、不等式の解き方について、数直線などを用いて指導することで、不等式をより厳密に指導できる。また、連立1次不等式の応用として、2次不等式を教えることで、2次不等式の理解を2次関数との関連で深めることができるなど、従来は中学校で教えられていた基礎、基本にかかわる内容を、高校で工夫して指導することにより、現行課程では難しい効果的な指導方法を新たに確立することも期待できる。
 また、「平面図形」における「三角形の性質」や「円の性質」においては、例えば、三角形の重心、内心、外心などの基本的な定理を、生徒自身に証明させたり、あるいは、四角形が円に内接する条件、2つの円の位置関係などを考察させることによって、図形的なものの見方、考え方を広め、図形に対する直観力や洞察力を養うことができる。そして、「三角比」「図形と式」「ベクトル」などの分野で活用できるように、それぞれの分野との学習のつながりも工夫できる。


表2 数学における中学校からの移行内容
現行課程 新課程
 中学校1年 数の集合と四則 →数学I 方程式と不等式
 中学校2年 三角形の重心
1元1次不等式
資料の整理
→数学A
→数学I
→数学B
→数学基礎
平面図形
方程式と不等式
統計とコンピュータ
身近な統計
 中学校3年 2次方程式の解の公式
円の性質の一部
相似形の面積比、体積比
球の体積、表面積
標本調査

いろいろな事象と関数
→数学I
→数学A
→数学I
→数学I
→数学B
→数学基礎
→数学I
方程式と不等式
平面図形
図形と計量
図形と計量
統計とコンピュータ
身近な統計
2次関数

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