VIEW21 2002.4  コミュニケーション新時代
 生徒との時間をより大切にするために

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視覚的な面談資料に生徒は興味を示す

 高校現場において、組織立った面談の平均的な時間は、生徒一人当たり10分から15分程度だという。「それぞれの生徒の状況に合わせて生徒から話を引き出したり、教師側から十分示唆を与えるためには、もう少し時間が欲しい」というのが多くの教師の正直な声だが、限られた期間の中で、全員の生徒と面談をするためには、時間の制約があるのも事実だ。
 そのため、より生徒が理解しやすい資料の見せ方をすることが一つの解決の方法になる。例えば、入学時からの定期テストや校外テストの成績推移が、科目別にグラフ表示された資料を示す。すると生徒は、数字だけが並んだ資料よりもはるかに興味を示す。
 「得点変動の激しい科目は何か」「成績全体が下がりだしたのはいつか」などの事実が視覚的に分かるので、生徒は自分の問題点が理解しやすくなる。同様に、教師にとっても成績低迷の原因がつかみやすくなる。すると、問題点を教師と生徒が素早く確実に共有できるので、一層突っ込んだ話し合いが可能になる。10〜15分の面談時間を、より質の高いコミュニケーションの時間にすることができるわけだ。
 このようなビジュアル化された資料の作成は、情報技術が最も得意とする分野である。
 成績処理用に入力されたデータはコンピュータに蓄積され、データの再利用が可能になる。科目別のテストの得点を入力するだけで、科目別順位も偏差値も総合順位も瞬時に計算してくれる。また成績を様々な形のグラフに表現することも簡単に行うことができる。さらに、在学中のデータが蓄積されるので、成績の推移も容易に管理できる。
 成績推移グラフを手作業で作成しようとすれば、大変な時間がかかり、生徒とのコミュニケーションに充てる時間はより少なくなってしまう。情報技術を活用して、説得力の高い資料が短時間で作成できれば、コミュニケーションのために使える時間が生まれるのである。
 ある高校では、成績処理だけではなく、調査書の作成から学割発行業務までも含めてコンピュータで行うようになった結果、事務処理の時間が大幅に削減できたという。情報技術を上手に活用することで、生徒は多彩な資料を使った面談に興味を持ち、教師は生徒とじっくりと語り合える時間が増加する、という二つのメリットが生まれたのだ。

生徒たちが学びの喜びを実感する授業

 最近はパソコン教室で英語の授業を行うことも少なくない。インターネットを活用した授業は、教室における教師と生徒とのコミュニケーションに、新しい形を生み出しているようだ。
 ある高校では、パソコン教室で英語の授業を行うのに際し、海外の高校生と英語で電子メールのやりとりをする時間を取り入れた。
 その結果、「自分の書いた英語が通じた」という実感が喜びになり、もっと伝えたい、学びたいという「学び」の動機になっていった。生徒たちは早朝補習にも積極的に参加し、時に教師より早くやって来て、パソコン教室を「早く開けて」とリクエストするほどになったという。それまでほとんど使われることのなかった和英辞典も、この授業により7割ほどの生徒が使うようになった。
 教師と生徒との関係に「外国の高校生」が加わったことでコミュニケーションが深まった好例である。なお、時差のある外国の対象校探しには、英語の教師がインターネットを利用し、相手校との交渉には電子メールが使われた。ここにも情報技術ならではの利便性と可能性が秘められている。
 授業に情報技術を深く活用していくと、教材自体がコンピュータやネットワーク上に「保管」されるようになる。そこでは、生徒は自宅に居ながらネットワーク経由で教材にアクセスし、予習や復習も行うことができるような世界になることが指摘されている。そのとき、授業の在り方、教室における教師と生徒とのコミュニケーションの在り方は、次なる次元へと大きく変化していくことだろう。

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