VIEW21 2002.10  特集 進む「理科離れ」と理科教育の展望

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知識と経験の蓄積が
創造性発揮の必須条件

 「理科離れ」「科学技術離れ」を防ぎ、将来を担う人材を育成するために、経済同友会では教育現場へ次のような提言を行っている。

1.自然科学の「原理・法則」の定着とそれを活用する教育の展開
 科学技術分野において創造性を発揮するためには、まず、必要な知識と経験の蓄積が不可欠である。そして、獲得した知識や経験を実際に活用することで確実に定着させることが大切である。また、子どもが関心に応じて学べるよう、習熟度に合わせた学級編成を行うなど、学習の選択の幅を拡げることも必要である。

2.子どもたちが主体的に学ぶ教育への転換
 子どもが多種多様な場で主体的に学び、成長できるよう、学校・家庭・地域の連携を強める。教師は、子どもが自ら学ぶよう動機付け、子どもに考え悩む機会を与え、思考力や探求心を養う。
 「産業界としても、子どもの『理科離れ』を防止するためにできることはたくさんあると思います。我が社でも、東京都町田市の東京研究所の研究員が近くの小・中・高校で『出前授業』を行ったり、静岡県の工場で『夏休み理科実験教室』を行ったりして、科学の面白さを伝えています。実験をすると、子どもたちは目の色を変えて興味を持ちます。子どもは決して理科を嫌いになっているわけではない。科学技術の面白さを知り、好きになるチャンスが減少しているだけではないでしょうか」

バイオアドベンチャー号での出前授業

 協和発酵では、東京町田市の東京研究所の研究員が中心となり、「移動理科実験教室」をボランティアで行っている。対象は近くの小・中・高校。土日を利用し、約20校で授業を行ってきた。きっかけは「『理科離れ』を防ぐために、子どもたちに驚きや感動を味わわせて、科学の面白さを知ってもらおう」という平田社長の言葉だ。「バイオアドベンチャー号」と呼ばれる顕微鏡などの最新機材を運ぶ車に乗り込み、「出前授業」に出掛ける。
 例えば、高校では「遺伝子探偵」というテーマで授業を行った。これは、未知のゲノムDNA(ニワトリ、マウス雄・雌)を増幅し、増幅したDNAを電気泳動で確認して、未知のDNAがどの動物のものかを推測するというもの。
 また、小学校では、「微生物は働きもの」というテーマで、微生物の顕微鏡観察を行った。授業の10日ほど前に、寒天シャーレに葉や土、ごみなど、生徒にとって身近なものを入れて封をし、当日顕微鏡で覗く。「自分の噛んだガム」や「ネコがなめたキャット・フード」などから生えた微生物を見た児童からは、驚きの声が上がったという。
 小・中・高校の段階を問わず、最新の機材を使って実験を行ったり、第一線で活躍する研究者に専門的な話を聞く機会はとても貴重な体験である。
 どの回でも参加した子どもは全員、食い入るように研究員の説明を聞いていたという。

写真
出前授業の様子(写真上)とバイオアドベンチャー号(写真下)


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