ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
学生の変化に大学教育はどう対応しているか
徳永正晴
北海道大副学長・アドミッションセンター長
大学院理学研究科教授
徳永正晴
Tokunaga Masaharu

佐藤錬太郎
北海道大
大学院文学研究科教授
佐藤錬太郎
Sato Rentaro

横山伸一
北海道大
学務部厚生課長
横山伸一
Yokoyama Shinichi
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学生の満足度向上と効果的な高大接続を目指す北海道大の取り組み
 北海道大でも、近年の学生の変化を受けて様々な改革が行われている。一連の取り組みにかかわってきた大学院文学研究科の佐藤錬太郎教授は、その背景を次のように語る。
 「近年、将来展望が曖昧な学生や学習意欲が低い学生が多くなり、講義でも教官が指示を出さないと動けない学生が目立つようになってきました。また、アンケートを取っても『入学後にいろいろな学問を見てから専攻を決めたい』という意見が目立つようになってきました。『学生主体の大学』を目指す以上、このような現状を踏まえつつ、学生が自分から学習に向かうような方策を考える必要がありました」


高大のつなぎ科目「一般教育演習」で大学での学び方を修得させる
 このような問題意識を背景として、同大は以前より「一般教育演習」という科目を開講してきたが、これを95年からほとんどの学生に履修させることにした。これは、教官一人に対して学生20人程度がつく演習(ゼミ)形式の授業である。授業を受け持つのは各学部等の教官で、担当教官の専門分野に応じた内容で行われる。つまり、この科目は教官と学生が少人数で向かい合うことを通して、学生が「学問の学び方」を身に付ける場なのである。副学長の徳永正晴教授はこの授業の意義を次のように評価する。
 「『一般教育演習』を通して学生に一番伝えたいのは『大学は自分で勉強するところなんだ』ということです。少人数のゼミ形式の授業を通して、『大学は教官から一方的に教えてもらうところではなく、自分で疑問を持って、自分で学んでいくところだ』という実感をつかんでほしいと思います。実際、学生からは『この授業を受けて、初めて大学がどういうところか分かった』という意見や、『この授業をきっかけに自分から積極的に学習に取り組めるようになった』といった意見が寄せられています」
 入学当初からこのような授業を履修することで、学生が授業からドロップアウトすることを防いでいるのである。02年度、同大はこの科目を152コマ開講したが、03年度からは158コマに開講数を増やし、さらに少人数教育を徹底しようとしている。


高校訪問や地区説明会で将来の入学生に正確な大学像を伝達
 同大では、これから大学進学を目指す高校生に対しても、明確な目的意識を持って入学してもらえるよう留意している。学務部厚生課長の横山伸一氏は、次のように語る。
 「学生に対するフォローは重要なことですが、それと同様に、これから本学を目指す高校生に対する働きかけも大切だと考えています。受験生や保護者の方には、何を勉強したいのか、将来何になりたいのかといった観点から、本学を受験してほしいと思っています」
 こうした意識付けを行うべく、同大ではアドミッションセンターを中心に、各学部等の協力を得て高校訪問や地区説明会、オープンキャンパス・体験入学を実施し、できるだけ正確な大学像が伝わるよう、様々な取り組みを行っている。
 例えば、体験入学では、通常行われているような講義やゼミに高校生が参加し、模擬ではない本物を体験できるようにしている。また、各学部の教官が道内の各都市へ出向き「ミニ講義」や「実験・実習」を行うといった取り組みも進められている。
 「高校生の段階でどれだけ目的意識を持てるかが、入学後の学習意欲に大きくかかわります。高校生には、大学に入ることを目的にするのではなく、大学に入ってから何を学び、どのような力を付けるのかをしっかり考えてほしいですね」(横山課長)
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