ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 茨城県立下館第一高校
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生徒の「横並び意識」を逆手に取って課外への参加を促す
 こうした生活指導と両輪をなすものとして、同校では学習指導の充実も図った。とりわけ定員割れ、二次募集という事情を抱えて入学してきた学年は、当初から基礎学力の不足が指摘されていた。同学年を担当する木村益巳先生は当時をこう振り返る。
 「本校では年2回、6月と10月に『進路実態調査』を実施しています。そこで分かったことですが、この学年は他の学年に比べて家庭学習時間がぐっと少なかった。このことは、模擬試験の成績にもダイレクトに現れました。英、数、国の3教科共にです。厳しかったですね」
 しかし、ただやみくもに勉強を押し付けるのでは意味がない。問題は、生徒が自ら学習に取り組むよう、いかに動機づけをするかである。そこでホームルーム、学年集会、保護者向けの進学講演会、進路委員会などあらゆる場面を使って、学力低下の現状を繰り返し伝えることにした。
 「必要とあれば、実際の偏差値を過年度と比較したり、名前は出さないけれども他校と比較したりして説明しました。生徒の変化はかなりありましたね。まず授業での集中度が増しました。家庭学習時間は今のところやや改善された程度ですが、次回の調査ではだいぶ変わっているのではないでしょうか。そういう確かな手応えを感じています」(木村先生)
 同時に、具体的な学習指導にも工夫を凝らした。その中心となったのが、英、数、国の課外指導だ。入学後初めての『進路実態調査』を受けて、まずは英語と数学の課外指導が実施された。英語は放課後1時間の課外授業とノート指導を組み合わせ、部活動がある生徒のために朝課外も行う。数学は朝10分の小テストと週末課題を組み合わせた。さらに2年生になってからは、国語の課外指導も開始。英語担当の外山徹先生は「エリート集団をつくるのが目的ではありません。自分から積極的に取り組もうという生徒、できなくてもやる気を失わないで再挑戦できる生徒を育てようということで始めました」と意気込みを述べる。
 特筆すべきは、課外指導への参加がすべて生徒の自主性に委ねられているにもかかわらず、生徒の参加率が着実に高まっていることだ。例えば英語の課外指導には、現在100名近い生徒が参加している。そこには、当初懸念された「教師と生徒の横並び」感覚を逆手に取った、発想の転換があった。
 「生徒の物怖じしない気質を利用して、全クラスに参加を呼び掛け、廊下でも声を掛けました。ただ、最初は集まりませんでしたね。私の担当で言うと、1年生の時はたったの16名。それでも、2年生になったらその子たちが核になってくれるだろうと期待を込めて、一人ひとりつながりを絶やさないように指導してきました。その結果、2年次の時点では倍以上の35名に膨らんだのです。今では英語の教師全員で指導に当たっています」(外山先生)
 学習への動機づけと課外指導という二段構えの学習指導は、確実に実を結び始めている。以前はおしゃべりが目的で職員室を訪れていた生徒たちが、今では教科の質問のためにやって来る。模擬試験の成績も1年生の後半から徐々に上がり始め、2年生になった現在では、過年度とほぼ同じレベルに達するまでになった。


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