ベネッセ教育総合研究所
特集 学力多層化への対応
PAGE 11/17 前ページ次ページ


学習方法の習得と生徒の意識改革を図る「学習方法習得体験学習」
 同校では毎年4月、新入生を対象に「学習方法習得体験学習」を実施している。
 1年生の生徒の多くは、各科目をどのように勉強すればよいのか、まだその方法を身に付けていない。そこで学習方法習得体験学習によって、高校で必要とされる授業の受け方、予習・復習の仕方を説明し、実際に体験させることで、学習方法を体得させるのである。
 04年度の学習方法習得体験学習は、4月8・9・12日の3日間に渡って校内で行われ、国語、数学、英語に各110分、地歴・公民、理科には各50分の時間が割り振られた。
 「教科ごとに、生徒にはまずノートの取り方や辞書の引き方、予習・復習の仕方をレクチャーします。レクチャーが終わったら、実際に予習をしてもらい、それを基に模擬授業を実施。更に模擬授業の後には復習をさせます。このように予習、授業、復習のサイクルをミニ体験させることで、生徒はどのように学びに取り組めばよいかを理解し、体得するわけです(図2)」(平山先生)
図2
 この学習方法習得体験学習を通じて多くの生徒が実感するのが、「高校の授業は、中学校までとはまるで違う」ということだという。生徒の感想を見てみると「授業の内容、スピード共に中学校の考え方では通用しないと思った」「やらなければいけない課題がたくさんあるので、今までの自分に対する甘さを捨てる良い機会だと思った」といった声が数多く寄せられている(図1)。
図1
 学習方法習得体験学習の一番の目的は、高校で必要となる学習方法を身に付けさせることだが、同時に意識改革の意味合いも持っているのである。加えて平山先生は、もう一つの効果を指摘する。
 「学習方法習得体験学習をスタートさせてから、生徒たちの宅習時間が増えました。本校では、学期初めに全学年を対象として学習時間調査を実施していますが、例えば現2年生は、1年の時と比べて週計で1時間増の4時間になりました。これは『勉強しなければ』という意識が高まったことが理由でしょうが、体験学習を通じて予習や復習のやり方が分かったから、勉強に取り組みやすくなったという面も大きいのではないかと思います。何をやってよいか分からなければ、宅習しようにもできませんからね」
 平山先生によると、生徒に学習の方法(=学習の質)を身に付けさせることは、学習の量の拡大にも結び付くという。
 「例えば宿題を課しても、提出しない生徒がいますよね。これはやる気がないから宿題をしてこないのではなくて、問題の解き方が分からないから宿題に取り組めない場合が多いのです。そこで本校では宿題を出すときに、必要な生徒に対しては、問題への取り組み方についてのヒントを書いた補助プリントも一緒に渡すようにしています。すると生徒は補助プリントを見ながら課題に取り組むようになり、やがて学習の仕方を身に付けていくのです。学習方法習得体験学習と発想は同じですね」
 同校では03年度より、新入生ばかりでなく2年生に対しても、4月に学習方法習得体験学習を実施している。ここでは学ぶ内容の高度化に沿って、より高いレベルの予習・復習の方法を身に付けさせることを目的としている。
 「例えば国語の予習で言えば、2年生になれば、知らない語句の意味や用法を調べておくだけでなく、段落に分けて文章の展開を整理したり、200字程度に要旨をまとめてみるといった、1年生とはまた違う学習が求められます。最初に身に付けた学習方法をずっと続けているために、2、3年生になって成績が伸び悩む生徒がいますが、生徒の学習段階に合わせて、教師が適宜学習方法についてのアドバイスをすることも大切だと思います」


PAGE 11/17 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse