ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 2004年度個別学力試験を読み解く
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意見の中身が問われる自由英作文
 「使える英語」力を重視する流れの中でもその象徴と言えるのが、個別学力試験における自由英作文の出題である(図1、4)。
図4
岡山大の松畑 一先生は、「自由英作文は、狭義の言語運用能力を見ようとするものでは決してない」と語る。
 「本学では長年に渡って自由英作文を個別入試で課してきましたが、問おうとしているのは、言い回しの正確さや構文の正しさではなく、筋道だった論理展開をうまく英語で表現できているかどうかです。入試問題である以上、語数、テーマなどといった、設問条件を守って書くことは前提ですが、三単現の―(e)sの付け忘れや多少のスペルミスがあったとしても、全体の論理展開が優れていれば、大幅に減点するようなことはありません」
 この点に関しては富山大も同様の採点方針だと言う。
 「序論から結論まで通して見たとき、論理の破綻がないか、あるいは課されたテーマに対応した自分なりのメッセージが伝わるようになっているかどうかが評価の大きな部分を占めています。意見の乏しい、紋切り型の表現で語数を費やしているような場合は、たとえ英語として正しく書けていたとしても、評価は下げていますね」(新里教授)
 なお、「使える英語」を意識した出題は、和文英訳についても当てはまる。図5に示した岡山大の問題はその典型の一つと言えるが、極めて実践的な場面設定での和文英訳が求められている。「使える英語」力重視の流れに乗って、このような出題は増加していくのではないだろうか。
図5

リスニングテストは技能融合型の出題に移行する可能性も
 一方、これからの入試を考える上で欠かせないのが、センター試験とは別に、大学が個別に課すリスニングテストの在り方である。センター試験へのリスニングテストの導入が06年度入試からスタートするため、将来的にはセンター試験との差別化を意識した出題にならざるを得ない。そのような中で松畑先生が指摘するのが、「技能融合型」のリスニングテストが拡大する可能性だ。
 「既に一橋大などでは、リスニングとライティング双方の力を問う問題を出題しています(図6)。
図6
4技能をバランス良く使いこなす力を育成する、という流れの中で、このような出題が拡大する可能性は十分あるでしょうね」(松畑先生)
 更に、「聞く」技能を測るリスニングテストに代わり、「話す」技能を測る出題が個別学力試験で取り入れられる可能性も考えられる。
 「既に岩手県など、スピーキングテストを公立の高校入試で取り入れ始めたところもあります。英語の教員養成系の学科など、英語力が特に重視される学部・学科の場合、インタビューテストなどを取り入れることも選択肢としてあるのではないでしょうか」(新里教授)


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