ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 2004年度個別学力試験を読み解く
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訓練と発信のバランスがとれた指導を
 実践的な英語力重視の出題傾向は、新課程入試を迎える06年度以降も続くことになりそうだ。では、こうした状況下で高校の英語教育に大学側は何を期待しているのだろうか。松畑先生が強調するのは、一つひとつの単語や文法を個別に覚え、知識を積み上げるだけでなく、総合的な力としての英語力を生徒に身に付けさせてほしいということだ。
 「生徒の読解問題への解答を見ていても、単語の意味は全部分かっているように見受けられるものの、文章の大意がつかめてない訳が多いように感じます。語彙は語彙、文法は文法と、技能を分割した上で、それぞれを身に付けさせるスタイルの授業が多いためかも知れません。今後は、多技能を複合的に学べるような授業の在り方が必要なのではないでしょうか」(松畑先生)
 では、そうした授業はどのように展開すればよいのだろうか。新里教授は具体策として、訓練と発信のバランスが取れた授業を提案する。
 「例えば、自由英作文の指導を例に取ってみると、テーマや文章の展開についてブレーンストーミングを行わせ、生徒がメッセージを考えることに集中できるようにすることが重要です。この場合、語彙などは教師の側がどんどん与えていくといった指導法がよいでしょう。語彙や文法事項をきちんと押さえることも大切ですが、全部を完璧にしようとすると、生徒の自由な発信力が損なわれかねません。文法については『今回は冠詞を正しく使う』などと、気を付けるべきテーマを絞って訓練してはどうでしょうか」
 とは言え、「文法、語彙重視の出題へ揺り戻しがあるのでは」との疑問が高校現場で根強いのも事実。だが、両先生共に、そうした動きが起こることは考えにくいと言う。
 「大学でもディスカッションをしたり、レポートをまとめるといった授業が増えており、近年はそうした授業で力を発揮できる生徒が増えていますから、『英語力』に対する大学人の見方も変わってきていると思います。実際、理系の先生と話していてもよく出てくるのは、『専門的な論文を読みこなす力は大学でも身に付けられるが、コミュニケーション能力や自己表現力は、高校段階からの積み上げが必要』ということです。中には、大学で伸びる基礎さえしっかりと身に付いていれば、細かな知識は不要だと言い切る方もいます。高校段階では、様々な能力をバランスよく伸ばす指導を実践していただきたいと思います」(新里教授)
 高校現場が思っている以上に、大学側の英語力に対する見方が変わってきているようである。


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