ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
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「広げる・揺さぶる」指導の重視
---生徒、社会情勢の変化に対し、何らかの形で対応しなければならないというご指摘でした。しかし、近年の取り組みによって、進学校の進路学習のスタイルはある程度確立したようにも思えます。見直しをかけるとすれば、まずどんな点になるのでしょうか。
鈴木 私自身の反省点でもあるのですが、1年から3年に向かって、直線的に進路を「絞り込む」という指導に対して見直しが必要だと思います。「早く進路を決めて、早く学習に向かわせる」システムは、確かに大学進学を考えると効率的なのですが、今の生徒の資質を考えると、どこかで意図的に視野を広げる活動を取り入れないと、高校生活の初期に把握できたごく狭い選択肢の中から人生を選択させることになりかねません。1年次にできるだけ視野を広げる活動に徹すると同時に、2年の4月辺りで、決めかけた進路にもう一度揺さぶりを掛けるような仕掛けが必要だと思います。
鈴木達哉
直線的に「絞り込む」アプローチには反省が必要ではないか
久保田 それは同感ですね。学校の抱える生徒層によって違いもあるのでしょうが、2年の夏くらいまでは「広げる活動」や「夢を追い続ける活動」が必要なのではないかと思います。本校でも、不況の影響なのか、1年生の初期段階では明確な志望動機を持たないまま医歯薬系を志望する生徒が、最近増えています。自分の好きなことや適性をとことん見極めることの意義を、改めて考えなければならないと思います。
塩野谷 もう一つ見直すべきは、進路学習の成果に対する我々自身の認識です。「進学実績が伸びた」というのは、取り組みの重要な成果ですが、やはり本当に大切なのは、20年後、30年後に生徒が「これでよかった」と思えるような人生を送っているかどうかだと思うのです。狭義の「進学学習」に陥らない本当の「進路学習」こそ、これから求められる全人教育だと思います。
井上 進路観育成を「人づくり」に関わる活動として捉えなければならないということですよね。「総合的な学習の時間」ができてから、進路学習を「特定の時間の枠内で行うもの」という感覚を持つ教師が逆に増えているような気もします。本来は部活動や生徒会活動、日々の授業も含めた活動のはずです。「学校の教育活動全体が、生徒に生き方を考えさせる場になっているか」という意識を持って、個々の教育活動を見直さなければなりませんよね。


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