ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 中高6か年指導のポイントを探る
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早期に進路意識を高め中だるみを防止する
 学校行事や教科などの取り組みを通じて学習へのやる気や自信を引き上げている同校だが、6年間の長いスパンの中で起こる生徒の「中だるみ」をいかに乗り越えさせるかも大きな課題である。
 そこで同校では、中高一貫教育の帰着点としての大学受験を見据え、行事や「総合的な学習の時間」などの場を通して、職業観や将来像などを描かせる取り組みを中3からスタートさせると言う。
 進路指導部主任の住友卓郎先生は、次のように述べる。
 「中3で大学の話をしても、なかなか実感としてわかないでしょうから、中学では『総合的な学習の時間』を使って、職業研究や学問研究などを積極的にさせています。志望を決めさせるというよりは、自分たちの興味や関心はどこにあるのかという自己理解を深めると共に、なぜ勉強が必要なのかを考えさせることが狙いです。研究成果を弁論大会や文化祭などで発表させることで、自信と達成感を味わわせ、将来の大学・学部選択のベースを培えるようにしています」
 更に、進路意識を養う取り組みは、高1でも続いていく。
 「中学校の延長のような高1と、文理コースに分かれて大学受験を意識し始める高2ではかなりギャップがあります。いかに意識の切り替えを図るかという点が、ここでの大きな課題です。そこで高1では、中学までとは異なり大学の実態に触れさせて、大学受験に向けて意識を切り替えるための取り組みをLHRなどの場で行っています。例えば、希望者を募って、大学のオープンキャンパスに連れて行ったり、大学とタイアップして出前講義のような形で、大学における学びを生徒に体験させたりする機会を設けています」(林先生)
 また、03年度からは中3のAコース内に「東大・京大・国立医学部クラス」を1クラス設置したことも、「大学への目的意識を早期に高めるための仕掛けの一つ」だと早坂先生は指摘する。
 「本校の場合、国公立大への進学率は50%以上を維持していますが、東京大・京都大レベルの大学に関しては、生徒自身があまり強い意識を持っていません。英才教育を行うというよりも、生徒の意識を触発するのが、このコースを設置した主眼です。もっとも、このシステムが成功するかどうかは、ひとえに下位層を支えられるかどうかだと思っています。ですから、教科指導に関しては生徒の目から見ても明らかに、上位の生徒よりも下位の生徒に手厚い指導を行うことで、信頼感を損なわないよう心掛けています」
 下位層の生徒を下支えするために、家庭学習の記録を全学年で提出させてこまめにチェックし、早朝テストで到達度を確認。長期休暇中には「宿題やりきろう会」、定期考査前には「質問しよう会」を実施するなど充実した指導を心掛け、生徒が意識面・学習面共に落ち込まないようにしているという。 
 (1)中学では学校行事を充実させ、生徒に達成感と教科学習への興味を高めていく、(2)中3〜高1にかけて、内発的な動機付けを高めるための体系的な進路学習を実施、(3)進路指導プログラムの体系化と教師間の情報共有と連携を実践。生徒の落ち込みをできるだけ早い時期にフォローしていく―。
 長い時間をかけて地道な取り組みを積み重ね、一人ひとりの生徒との信頼関係を築き上げる。そんな指導の実現を目指すことが同校の強みとなっているようだ


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