ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 工学部教育の変化と工学教育・研究の展望
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「創成学習」によりモノ作りの資質を習得
 徳島大がいち早く教育面の改革に着手したのも、地方の国立大学法人として知名度を上げ、国立大学法人化以降の大学間競争の激化を視野に入れた生き残りを図るための手立てに他ならない。
 徳島大が教育面にも力を入れていることは、初期指導の充実からもうかがえる。各学科で工夫を凝らしている導入教育では、少人数による実験・実習を組み、座学からの脱却を図っている。また、99年に「新工学教育プログラム」図10)を始動し、より一層学生の自立心と創造性を伸ばすカリキュラムへと軸足を移した。
図10
これにより、厳格な成績評価を行うGPAの導入や学生による授業評価、学内ネットワークを駆使した情報処理の設置、実験実習を重視した科目の導入など、現行のJABEE(※2)にも適合する教育・評価システムを構築した。
※2 JABEE:日本技術者教育認定機構が行う技術者教育プログラムの認定制度の略称。プログラム修了生には、技術士の基礎資格が与えられる。認定プログラム数は累計102、年間修了者数は約8500名(04年8月現在)。
 「新工学教育プログラム」の最大の特徴は、徳島大が工学教育の中で重視する「創造性教育」を中心に据えていることである。その意義を、工学部副学部長の近藤光男教授は次のように語る。
 「国際競争の激化の中、先端的・独創的な研究開発が必要とされる現在においては、工学においてモノをデザインする能力は、技術者として必須の資質です。本学では、この資質を養うための教育を『創造性教育』として重視し、専門教養教育、専門教育と並ぶ柱の一つとしているのです」
 「創造性教育」を具体化した取り組みが「創成学習」である。学生がグループになってモノ作りのテーマを定めて設計・製作、更に成果についてプレゼンテーションを行い目標の到達度について自分たちで評価を下す学習方法だ。「ゴム動力による移動物体の製作」を例に取ると、まず各自が機構の設計を行った後、実際に金属やプラスチックの小物を使って移動物体を製作。次いで、公開発表会で作品の到達距離を競い、最終的に設計の思想や反省点を技術報告会で報告するといった具合である。
 自学自習方式のこの学習プロセスにより、学生は主体的な問題解決力、観察力、自分の意見を伝える伝達力などを身に付けるわけだが、中でも教員や学生同士の交流が深まることの意義は大きいという。
 「学生との距離が近付くので、学生一人ひとりの個性を見極め、個性に合った指導ができるようになる意義は大きいですね。就職についても、学生の得意分野や将来の夢などを踏まえて、より的確なアドバイスができるようになりました」(近藤教授)

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