ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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2 潜在的な可能性から将来像を描きにくい
 図2は、将来展望に関する設問をここ10年間定点計測したものである。
▼図2 青少年の将来展望に関する自己概念 高校生・大学生・経年変化
図2
▲クリックすると拡大します。
高校生や大学生が自分自身をポジティブに捉えにくい状況に置かれていることは、これらの設問に対して、「イメージからの選択」で一割強、「可能性からの選択」で4人に一人程度がNOと回答していることからも明らかである。
  「イメージからの選択」の肯定率は、高校生から大学生になるに従って増加している。経年変化を見ても、イメージ的には将来像を描ける生徒が増えているようだ。
  しかし、自分の潜在的な成長の可能性を踏まえた「可能性からの選択」は、状況が異なる。特に高校生は、年々この肯定率が低下しており、流動的な社会情勢の中で具体的な将来ビジョンを描きにくい状況に置かれている生徒が増えていることを示している。その反面、大学生の肯定率はわずかながら伸びており、近年充実してきた学部段階でのキャリア教育が、一定の成果を上げつつあることを示している。
  とは言え、総じて見ると、約2割の学生が「私は誰、どこに行くの」の答えを出せず「どう生きるべきか」という意味不安に直面しているものと思われる。
  「イメージからの選択」は非現実的な「夢」のレベルであるため、不可能の自己理解(私にはできない)となる可能性が強い。ネガティブな自己イメージしか持てない学生は、働くことの意味がつかめないため進路選択ができず、例えばニートのような「漂流する若者」になる危険性を抱えていると言えよう。
  青年期は自分自身について考えを深める時期だとされるが、真剣に自己と向き合った体験がないまま社会に出た若者や、キャリア形成の方向付けが不明確な「立ちすくむ」タイプの学生を受け入れるほど現代社会は寛容ではない。
  自己と向き合い、自分の良さや成長の可能性を探索させるためには、高校での進路学習や総合学習、大学における教養教育の一環としてのキャリア支援教育など、「生き方・在り方」を追求する学習活動の体系化が求められている。


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