ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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高大が連携して「確かな学力」を育成するためには
 「学びに向かう力」を、大学が求めている「課題探求能力の育成」に結び付けるためには、どのような取り組みが必要なのであろうか。
  メタ認知(学習行動のモニタリング)が働く小学校高学年から大学生に至る青少年の学習意識と学習行動に関わる検証を積み上げた結果、両者を結び付けるのが「自己効力」であることが見えてきた。
  自己効力(Self Efficacy)とは、「課題解決に当たり、努力したり障害を乗り越えたりするためには、自分の行為によって課題解決ができると信じられなくては行動に移れない」とする概念である。言わば、「自分を(客観的な他者評価も含めた視点で)肯定的に評価できるかどうか」を示す指標だと言えよう。このレベルの高低と学習意欲や学習行動の間には顕著な相関関係が見られる。図3は、大学生の学習行動と自己効力の関係性を示したものである。
▼図3 自己効力(Self Efficacy)と学習行動 大学生04年5月
図3
▲クリックすると拡大します。
1 自己効力が学習行動を生み出す
 このデータによると、自己効力を強く実感し自分自身の成長に対する期待が膨らんでいる学生(L5・6)は、A「学びへのコミット」、B「学習実践度」、C「授業満足度」のいずれもが高い肯定度を示している。一方、実感レベルが中程度以下(L3以下)の学生(約39%)の肯定度は低く、L1に対するL6の肯定度は「学習実践度」で2倍に近く、また、「学びへのコミット」「授業満足度」では2.7倍に達している。中でも「進路支援(キャリア)教育」の満足度は4.2倍という大きな格差が発生しており、自己効力感と学習行動の相関の強さを示す結果となっている。
  図3の数値の一部をグラフ化した図4にも注目しよう。
▼図4 SES尺度から見た学習行動実践度と授業満足度
図4
▲クリックすると拡大します。
  教養教育・専門教育での「学習実践度」と、その結果として得られた「授業満足度」は勾配に格差はあるものの実感レベルの高いL6に向けて上昇しており、ほぼ正の相関がある。「行動」と「満足度」の格差は自己効力の実感レベルが上昇すると共に縮小し、L6レベルでは「行動」を「満足度」が上回り学習行動以上の満足を得ていることが注目される。同様に「学びへのコミット」についても顕著な正の相関が認められる(図3)。
  すなわち、「学びに対するモチベーションの高い学生」を育成することは、自己効力を実感しやすい学生を育てることでもあるのだ。高大が学習指導の中でこうした生徒や学生を、どのようにして育てていけるかが今後の課題であると言える。


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