ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 岐阜県立武義高校「意識改革」
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校長の熱意に部活動顧問が動く
 こうした動きは授業の改善だけにとどまらず、学校全体の改革をもたらすことになった。分掌ごとに問題点を話し合い、どのような取り組みをすべきかを列挙。「生徒把握のためにスタディーサポートを活用したい」「『オープンキャンパス・イン・武義』では講師を招いて進学説明会を設けよう」などと建設的な意見を出し合い、教師自らが率先して実行に移していったのだ。
  中でも特筆すべき変化は、部活動顧問の協力を引き出せたことだ。纐纈校長は部活動の練習は夕方は6時まで、朝練もなしとした、従来の内規に固執した。限られた時間の中で結果を出すことも、大切だと考えたからだ。しかし、部活動顧問の反発は大きかった。
  「夏でも6時までというのは厳しすぎるのではないか。太陽は高いのに」
  こうした反発に対して、纐纈校長は「生徒が自宅でも2時間勉強したらルールを変えよう」という条件をあえて提示した。部活動顧問が生徒の学習指導に対し、従来よりも危機意識を持って臨むのではないか、と考えたのである。
  この提案に対して各部活動顧問が示した行動は、纐纈校長の予想を上回るものになった。進路担当の片桐豊先生は、部活動顧問の変化について次のように述べる。
  「部活動顧問の先生が自ら責任を持って生徒の学習指導に当たってくれるようになりました。例えば、夏期休暇には午前中が練習なら午後は勉強をさせますし、公式試合のために模擬試験を受験できなかった場合には、追試の監督も担当してくれるんです。最初は一部の部活動だけの動きでしたが、今では多くの部活動で、こうした両立のための学習ケアがなされています」
 03年度3学期の活動を振り返る反省職員会は、こうした一連の意識改革の集大成となった。3学期の2月・3月の2か月間で、実に3回もの反省職員会を持ったのである。「03年度の反省点は何か」「次年度の取り組みは」などの議題について分掌レベルで討議し、職員会で検討後、各分掌でそれを更に精緻化していった。
  言うまでもなく多忙な高校入試の時期であり、特に武義高校の場合は学校独自問題で実施する特色化選抜を実施しているだけに落ち着いた話し合いの時間を取りにくい。そうした中で、分掌レベルの討議を含めて各々2週間に及ぶ反省職員会を3回も持ったのだから、03年度の1年間でいかに教師の意識が変わったかがうかがえるだろう。
  更に、04年度の決意表明として「理想とする学校像」「育成したい生徒像」などを内外に明示するための指針も打ち出され、武義高校のコミットメントとしてPTAや同窓会組織にも配付された(図1)。「もう後戻りはできない」というプレッシャーを、校長自身と職員にも与えるためだった。

▼図1 平成16年度を迎えて(今年度の指針とお願い事項)抜粋
図1
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