ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者と「共育」する学校づくり
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PTAの積極的な委員会活動が生んだ「YUME講座」
 一方、宮崎西高校では、学校の働きかけに呼応するかのように、保護者が中心となって行う各種の委員会活動も盛んである。図3は、宮崎西高校のPTAが実施する各種活動の概略をまとめたものであるが、いずれの委員会も学校側が設置する「渉外広報部」と緊密な連携を取りつつ活動している。

▼図3 宮崎西高校の主なPTA組織
図3

  「『渉外広報部』は、従来の渉外厚生部の機能を拡充して05年度に設けた新しい校務分掌です。中学校に対する広報活動なども扱う対外業務の中核となる部署で、PTAの各種委員会からも積極的に広報活動を支援してもらっています。学校と保護者の相互理解がPTA活動の活性化につながっているのです」(中浦教頭)
  そんな中、宮崎西高校では04年度から新たな取り組みがスタートした。「YUME講座」と題した、保護者による進路意識啓発のための講演会である。
  「元々この取り組みは、他校のPTA活動の視察研修がきっかけでした。視察先の高校では、同窓会で集まった卒業生たちが、現役の生徒たちに今後の生き方について講演を行う取り組みを実施していたのです。それに触発された保護者の方々から、『本校でも同様の活動ができないか』と、提案があったんです」(鍋倉先生)
  注目すべきは、この提案がその後、学校側との協議を経て実行委員会を立ち上げた後は、保護者を中心に急速に具体化されていったことだ。05年1月に全保護者に呼びかけ、05年3月には実施というハードなスケジュールながら、講座数22という規模や講師の人選はもちろん、当日の司会進行まで、すべて保護者が中心となって実施したのである。
  「学校側は、生徒の進路志望調査の結果など、主にデータ提供の面で協力しました。多忙な校務の関係上、本校では、今以上の負担を担任の先生方にお願いするのは難しい状況です。そんな状況を察して、進んで保護者の方が労を買って出てくださったことは、学校と保護者が協力することの大切さを、改めて実感する場にもなりました」(鍋倉先生)
  同種の取り組み事例は近年増えつつあるが、その多くは、学校主導で行われており、PTAや同窓会への働きかけに苦労している学校も少なくないと聞く。学校と保護者の信頼関係をベースに、保護者が自ら活動の形を作り上げ、成功を収めている宮崎西高校の事例は、今後の同種の取り組みに示唆を与えるものだろう。
  一方、教師はもちろん、この取り組みは保護者にとっても新鮮な体験になったようだ。講師として参加した保護者の大半は生徒の父親であったが、中には、初めて学校に足を運んだ父親もいたという。
  「今までPTA活動に敷居の高さを感じていた保護者の中には、今回の取り組みがきっかけで『学校・保護者の共育活動』に関わることの意義を実感できたケースもあったようです。講師の確保にあたり、立候補者を募ったのですが、全講師22名の約半数にあたる9名が、自ら名乗り出てくださいました。今後は講師を人材バンクのように活用するなど、多様な発展性が考えられると思います。また、実施時期についても、学校の指導ストーリーと合わせ、コース選択前の7月あたりに実施できればと思います」(中浦教頭)
  学校と保護者の理想的な関係とは、決して学校側の指導プランに保護者を一様に当てはめることではない。むしろ、それぞれの役割分担を前提とした上で、互いにサポートし合える関係を築くことであるはずだ。宮崎西高校の事例は、そうした理想的な保護者・学校間の関係を実現した一例と言えるのではないだろうか。

▼図4 「YUME講座」の一コマ
図4



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