ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 教員養成改革の方向性
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デマンドサイドの視点が大学淘汰のカギ
 とは言え、大量退職に伴う教員不足はあくまで一過性のもので、数十年後には後退に転じる可能性もあると、多くの教育関係者は指摘する。教員不足は都市部を中心として顕在化したもので、都市部以外の地域では均衡を保っているところも多い(図5)。一方で今回の抑制枠撤廃は、文部科学省・長谷川氏によると「ほぼ恒久的な措置となるだろう」ともいう。教員養成課程を卒業しても、教師として全国一律で安定的に採用される保証はないのだ。
▼図5 都道府県別教員需給バランスマップ
図5
(注)データは桜美林大・潮木守一教授による推計。
詳細は潮木研究室のHP(http://www.ushiogi.com/juyou.html
  そのため、定員削減あるいは教員養成課程の廃止を図る大学が出てくる可能性も、一方ではあるという。そもそも教員養成系大学には、学部・大学院を合わせて最低95名の専任教員を置かなくてはならないという厳しい設置基準がある。学部を維持するために膨大なコストが必要になるわけだが、その割に理学部や工学部のような顕著な研究成果を上げにくいというジレンマを抱えている場合が少なくないのだ。そのため「需給改善の進まない地域では、教員養成課程を経営効率の悪い学部と見なし、廃止を検討する大学も出るのでは」と岩田助教授は推測する。
  また、大学淘汰という観点から見れば、経営効率や設置基準の維持など、自校の都合を前提に組織運営を考える、言わば「サプライサイド(供給側)」の論理に立つ大学は、今後立ち行かなくなると見る向きもある。宮城教育大・横須賀学長は「学生の立場に立った『デマンドサイド(需要側)』の大学運営が重要」と力説する。
  「これからは、教育現場の課題に即して学問的・研究的に見直していく教員養成系大学・学部でなければ生き残ることは難しいのではないでしょうか。宮城教育大も40年以上迷いながら、その道を模索してきましたが、今後もできるだけ多くの大学がそういう方向性を志向してほしいと思います」

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