ベネッセ教育総合研究所
高大連携の新たなフォルム
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AO入試の意義と大学での導入教育
――高大連携によって、大学側が高校教師と接する機会もこれまでになく増えてきました。

柳澤 高校の先生方を見ていて思うのは、とにかく忙しそうだということです。そのため、普段から自分の教科に関する研究に取り組むことが難しくなっている。しかし、それでは高大連携が進んでも自分は単なる引率しかできないという危機感を持っている方も少なくないと思うのです。高校の先生も自分の好きな研究に打ち込めるよう、高校の中での役割分化が進んでもいいように思います。

小川 熱心な先生は、忙しい中で事前の準備や指導、大学との打ち合わせを熱心に行っています。そして、生徒の目的意識の在り方や学びの成果は、そういった先生の準備度に大きく比例しています。

山本 しかし、高校の先生方には、SSHの取り組みを一生懸命やろうにも今の入試の在り方を考えると今一つ打ち込めないという方も少なくないようです。SSHのような取り組みで獲得した学習歴が評価される場が大学に確保されれば、高校の先生方の指導の在り方に一石を投じられるのではないかと思います。本学が06年度より行う「マッチングプログラムコース」などが、生徒の学習歴を生かす入試・教育プログラムとして認知されることを期待しています。

小川 多くのSSH指定校の先生方は、実験・観察や分析、発表を含む課題探究型の学びを取り入れたことで、生徒の大学の学びに対する態度の醸成、表現力・探究心が高まったと指摘されています。SSHであるかどうかを問わず、こうした資質を育む取り組みが高校で充実することに対する大学の期待は、高校の先生方が思われる以上に大きいと思います。

柳澤 21世紀COEプログラムに採択された研究に取り組む人材を育成するため、本学では「スーパーサイエンス特別コース」を05年度より設置し、自己推薦型AO入試での選抜を行います。既に入試は終わり、1期生に対する入学前予備教育が進んでいますが、まさに原石と呼ぶにふさわしい、優秀な生徒が集まったと感じています。我々大学側も、1年次からゼミや語学研修を実施するなど、生徒の特徴に合わせて育てるつもりです。

小川 AO入試はもちろん、一般入試であっても、入試は単に入口の問題ではなく、教育プログラム全体の問題です。だから、AO入試で生徒を選抜したならば、その生徒に合ったカリキュラムが本来用意されているべきです。愛媛大は入学後のカリキュラムだけでなく、eラーニングを利用した入学前予備教育も実施されているとのことですが、こういう働き掛けは効果が高いのではないでしょうか。

倉光 大阪大理学部でも、1年次の早い時期に基礎セミナーに参加し、教授と共に進める研究の醍醐味に触れさせるなどの早期教育に着手しています。最近の学生は、コミュニケーションが不得手な傾向がありますから、このような場で研究者としての基礎を身に付けさせることも目的の一つです。

柳澤 大学は1年次が勝負なんです。1年次に動機づけが成功すると4年間で良い成果が上げられる。それなのに、これまで1年次はどちらかと言えば放っておかれていました。「スーパーサイエンス特別コース」の実践を見ながら、今後は、大学全体としても導入期からの教育を考える必要があるかも知れません。
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