ベネッセ教育総合研究所
特集 豊かな学力の確かな育成に向けて
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調査はこのように生かしてほしい
 この総合学力調査のいちばんの成果は、なんといっても、現場の先生方が普段から経験を通して感じておられたことが客観的データとして裏づけられたということにつきると思います。
 いま、全国各地で自治体独自の調査をはじめとして、いろいろなかたちで学力調査が行われ始めています。学力調査は、当然ですが、ただ実施するだけでは意味がありません。それが学力向上や学校改善につながってはじめて意義があります。以下、学力向上につなげるための実施の視点を四つ提起してみたいと思います。

(1)能力・資質のバランスを総合的にとらえる
 私たちの総合学力調査から、子どもの本当の姿は、教科学力だけでなく、「豊かな基礎体験」や「学びに向かう力」など、「学びの基礎力」を見ていかなければ、とらえられないことがわかりました。ぜひ、そのようなトータルな視点の調査を実施してほしいと考えます。そして、調査結果をレーダーチャートのようなかたちにして、能力や資質のバランスをトータルにみてほしいと思います。

(2)認識とのズレを確認し、その背景を探る
 例えば習熟度別授業の実施後に調査をしたのに、該当教科の結果が思わしくなかった場合、先生方がとらえる子どもと、実際の子どもの状態との間にギャップがあったと考えてはどうでしょうか。「この子どもたちは1回教えれば理解する」と先生は思っていたが、実際にはそうではなかった、という可能性もあるわけです。そのように、先生の認識と現実とのズレを確認するのに利用してほしい。

(3)予期せぬ成果や課題の発見を大事にする
 例えば「総合的な学習」で課題解決型の学習を実践した学校などは、教科の学習では特別な指導をしていないのに、書く力やまとめる力のスコアが予想以上に高かったりします。そのような予期せぬ成果等を大事にすれば、子どもを見る目や今後の授業を考える視点が違ってくると思います。

(4)継続的な実施と縦断的な分析を
 学力調査を学力向上のために役立てるには、ぜひ、目標(P)→指導(D)→評価(C)→改善(A)の一連のサイクルのなかに位置づけてほしいと思います。例えば年度当初に学力調査を実施し、その結果を踏まえて、その年度の授業改善計画をつくる。さらに年度末に再度調査し、その結果を授業改善への取り組みとすり合わせて反省の材料とし、次年度のプランへと反映させる、というのが理想だと思います。もちろん、経費もかかりますから、どちらか一方の実施が現実的かもしれません。しかし、つねに授業の改善をし続けるためにも、調査を1回だけに終わらせず、継続的な検証をしてほしいものです。
 なお、説明責任が問われる現在、保護者への結果の公表は当然のことですが、よいところだけを公表しても信じてもらえません。よかったことも課題も合わせて公表したい。そして、課題に関しては対策とセットで公表することで保護者の協力も得やすくなると思います。
(談)


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