ベネッセ教育総合研究所
特集 豊かな学力の確かな育成に向けて
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学力調査の結果では算数に課題
 長い「迷い」の日々を経て「03年度の研究は国語」と決まった学年末、清音小学校にぶ厚い封筒が届いた。2月に5年生で実施した学力調査()の分析資料だった。
 ベネッセ教育総研で実施した調査。国語・算数に関する学習到達度調査、および学習意識調査(自記式アンケート)からなる。

 教科学力の国語と算数のうち、国語が「おおむね満足」という結果だったのに対して、算数は「数学的な考え方」にあたる項目を中心に、標準に達していないことを示す▼マークが並んでいた。
 「国語に決まった校内研究をこのまま進めていいのだろうか…」
 新たに03年度の研究主任になった武政和茂先生は、このデータを持って大阪市立大学大学院の木原俊行助教授を訪ね、研究の進め方について助言を求めた。木原先生は同小の校内研究を長年指導し、この学力調査の開発にも携わっていた。
 木原先生がまず指摘したのは、「学びの基礎力」の結果が予想以上によかったことだ。生活科や「総合的な学習」で重視してきた「問題解決力」にあたる項目が高いレベルであった。
「うれしい結果でした。これまで育ててきた力が身についている。苦労の甲斐があったと思いました」(武政先生)
 それに比べて、「算数の力は十分には高められていない」という結果は気になるものだった。特に「数学的な考え方」は、これまで生活科や「総合的な学習」で重点的に取り組んできた「問題解決力」にかかわるため、期待されていた項目でもあった。
写真
▲写真2 5年算数「面積」(2003年度)
校内の観点別評価が裏づけになる
 データにより、これまでの取り組みの成果は十分あったことがわかり、その成果を教科にという研究の方向も間違っていない。だが課題があるのは、国語よりも算数。調査結果が示す方向は明快だった。しかし、学校として方針を決めるためには、学力調査でわかった課題が、調査を受けた5年生だけのものか、全学年に共通するものかを確かめねばならない。
 そこで、学年共通の課題であれば校内の評価データでも同じ傾向が出るはずと考え、02年度末の校内の観点別評価を再分析したところ、1年〜6年生のすべての学年で、算数の「数学的な見方・考え方」の力が高めきれていないことが確かめられた。
 さらに学力調査の資料を加えて、校内研究の方向性が再検討された。計画通りにするか、算数に変更するか。5月まで検討を続けた結果、先生方の意見は、「算数」だけに絞って研究することでまとまったのである。
 最後に意見がまとまった背景には、生活科や「総合的な学習」を研究していた時期から、「算数の力が伸ばしきれていない」と多くの先生方が実感していたことがある。
「ここ数年は、やりくりして、算数の年間授業時間を標準より5、6時間多くするなどの工夫をしていました。それでもなかなか成果が上がっていなかったのです」(横山先生)
 校内の観点別評価と外部の学力調査。客観的な二つのデータは、先生方が「授業を通して感じる子どもたちの姿」と一致していた。それぞれが持つ強い思いだけでなく、すべての先生が共有できる実感をもとに議論する「手がかり」になったのかもしれない。
図
▲図1 2003年度の校内研究テーマが決まるまで


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