ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者の教育力を生かす学校づくり
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「子どもに相談する」父親の割合が
米国・中国などは約50%、日本は約3%!
――では、現代の親子関係の特徴としては、どんなことが挙げられるでしょうか。
 現代は、親子がコミュニケーションをとりにくい時代です。変化の少ない時代では、年を取るほど経験に基づく知恵が蓄積されますから、年長者は尊敬されていました。けれども、社会の変化が激しいと、そうとは限りませんし、昔のことにこだわっていると、「遅れている」と思われる。だから、親も教師も含めて大人が尊敬されにくいのです。
 もともとコミュニケーションは、一緒に何かを目指したりつくったりという、共有する文化があると成立しやすいものです。だから、例えば子どもが買い物に行ったり家事を手伝ったりすると、それが会話の材料にもなったのです。ところが、いまはほとんどの家庭で、親子で一緒に何かをする機会が減っています。そのため、一方通行の会話になり、「なぜ片づけないの」「早く勉強しなさい」「まだ寝ないの」と詰問調になる。子どもにしてみれば、「いつも文句ばかり言っている」というイメージが強くなる。「共有する文化」ではなく、「強要する文化」になってしまっているのです(図3)。
図表
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●データの調査概要 図1 ベネッセ未来教育センター「第3回学習基本調査」より 調査時期/2001年5〜6月 調査対象/全国3地域(東京23区、四国地方県庁所在地、東北地方郡部)の小学5年生2,402人 
図2、3、4、6 ベネッセ未来教育センター「子育て生活基本調査」より 第1回…調査時期/1998年12月 調査対象/首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の小3〜中3の子どもをもつ保護者4,718人(うち母親4,475人を分析) 第2回…調査時期/2002年9月 調査対象/首都圏および四国地方県庁所在地、東北地方郡部の小1〜中3の子どもをもつ保護者9,857人(第1回との比較には、首都圏小3〜中3の母親4,896人のデータを使用)
 それよりも、親が自分を語ったほうがよいと思います。「今日、道端にこんな花が咲いていてうれしかった」とか、ささいなことでもかまいません。そうした話を通じて、親が人間として生きているということを子どもが感じれば、コミュニケーションは格段にとりやすくなると思います。ところが、これが日本人の、とくに父親にはなかなか難しいのです。
 東洋大学の社会学研究室のグループが、日本・アメリカ・中国・トルコなどの中学・高校生にアンケートをとったことがあります。そのなかで、「あなたの父親は、あなたに何かと相談するか」という旨の質問をしたところ、ほかの国は50%前後が「はい」と答えたのに、日本はわずか2.9%。格段の最下位でした(図5)。
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●データの調査概要 図5 東洋大学中里至正教授らによる若者の意識の国際比較研究より 調査時期/1993〜95年 調査対象/日本、アメリカ、中国、トルコなどの中・高校生6,037人
 例えば、「ネクタイを買いに行くから一緒に選んでよ。おまえの意見も聞きたいから」など、子どもを信頼し、意見を引き出すような対話が少ないのです。「勉強しているか?」「部活はどうだ?」とか一方的に高次の立場からしか話をしていない。だから、コミュニケーションが成り立たないのです。
 また、親には、子どもが夢をもてるように励ます姿勢も大切です。いまの世の中は、たくさんの職業があって選択の可能性が広がっています。しかし、選択肢が増えたことは、自分に向いているものを見つけにくくする面もあります。何をしていいのか迷っている若者の存在も大きな社会問題になっています。子どもの自分探しを応援するのが親の務めとして大切になってきます。それも一種の「ファミリーリテラシー」でしょう。


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