ベネッセ教育総合研究所
立山小学校
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興味を引きつける授業力で学びの力を引き出す
 朝日ヶ丘小学校のさまざまな取り組みは、実際の授業にはどのように生かされているのだろうか。前出の俵原先生による6年生社会科の授業を見学させていただいた。
  授業の主題は、「世界の国々と日本の比較」。この日の単元構想には、「自分の立場を明確にさせて、自分の論の根拠をはっきりさせるために、それぞれの立場から調べ学習を行う」と書かれている。児童の興味を引きつけるため、単純に外国と日本の違いは? と問うのではなく、世界の国々が六つの州に統一された2040年の世界を仮想し、国連に代わる「国際救助隊」が創設されたら、本部は日本と外国のどちらに置くべきかというテーマを設けていた。そのいずれかを選び、自分なりの根拠を調べる過程で、おのずと外国と日本とが比較されるというしかけだ。
  児童は極めて意欲的で、授業を「楽しんでいる」という表情がありありと伝わってきた。例えば、先生が質問を投げかけると、半数以上の児童が手を挙げる。黒板に答えを書くように言われれば、われ先にと黒板の前に集まる。意見が同じ児童同士の話し合いでも、真剣に討論をする姿が見られた(写真3)。
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▲写真3 意見が同じ児童が集まって、討論がスタート。
あちこちで活発な意見が飛び交っていた
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 授業後、俵原先生は、次のように話してくれた。
 「教科書をなぞるのではなく、いかに楽しめるテーマを探すかで、授業に対する子どもの目の色も変わってきます。次の授業では、自論をもとに討論することになっていますが、評価規準を作成する段階で、子どもが興味を持つようなネタを一連のストーリーとして作り上げることで、児童の意欲は大きく変わりますね」
 こうした教材開発や単元構想へのこだわりを支えているのも、頻繁に行われる前述の公開授業だ。つねに授業の改善を促される環境にあるため、授業のマンネリ化が防がれ、子どもたちの積極性も刺激される。こうした工夫を凝らした授業では、学習塾で先行学習をしている児童でも、授業に退屈さを示す姿はほとんど見られない。「知識を与える」のではなく、「考える」「自ら発言する」という側面からアプローチする授業の結果といえる。
 「学校の教師が最も大切にしなくてはならないのが、授業力です。授業を通して、勉強だけでなく、人とのかかわり方や、リーダーシップ、自立の精神など、人間の広がりをつくる多くのことを伝えなくてはなりません。そうした授業をつねに実践するために、今後も地道な研究を続けていくつもりです」(田村校長)
 通塾率の高い都市部の小学校にあっても、学校の果たすべき授業を高めるために、あくなき研究を続ける朝日ヶ丘小学校の取り組み。その前向きな姿勢からは、児童たちと一緒に自らも成長しようとする教師たちの思いがひしひしと伝わってきた。


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