ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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生徒をほめ、励ます指導で自信からやる気へ
 教職員が一体となって上記のような取り組みをした結果、平成14年度末、15年度末の「学力調査」(注1)の結果は、教科、学習意識のほぼ全ての項目で荒川区全体の達成率を上回った。

(注1)荒川区「学力向上のための調査」。平成15年度は、2月17、18日に実施

学力向上で成果を上げることができた要因はいったい何だろう。
 一つには、生徒に対する徹底したフォローがあげられる。
 補充教室を行うのは、10分間学習で不合格の場合だけではない。長期休暇明けのスペリングコンテスト(英単語テスト)などでも、合格点に満たない生徒には、補充教室を行う。100個もの英単語を一度に覚えるのが大変な生徒もいる。しかし、そういう生徒でも、何回かに分けてテストをするなどして、とにかく全部覚えさせ、最終的に全員を合格させる。
 「生徒を根気よく励まし、頑張らせて高いハードルを越えさせるんです。一度ハードルを越えられると、どんどん自分の力で頑張れるようになるんですよ」澤田先生はこう断言する。頑張ってほめられ認められる喜びが、生徒に自信をつけさせるのだ。
 補充教室で生徒が頑張っていれば、先生も早く帰るわけにはいかない。
「もちろん大変ですが、こちらが真剣になれば子どももそれに応えてすごいパワーを出してくれるんです。それがうれしいですよね」(澤田先生)
 補充教室は、先生たちの熱意のあらわれである。
 生徒を引っ張り、真剣に向き合うこと。これが、この学校の全体的な学力を底上げしているといえそうだ。 
 「生徒が勉強につまずく前に励まし支えることで、どの生徒も落ち着いて学習に取り組めています」(澤田先生)
 もう一つは、生徒を見守る先生たちの姿勢である。特に、部活動の顧問の役割は大きい。
 たとえば、生徒が再テストに合格すると、教科担任は、学級担任の他に部活動の顧問にも報告に行かせる。生徒は3人の先生からほめられ、認めてもらえるのだ。
 「部活動の時間を勉強にとられることをよく思わない部活の顧問も多いようですが、うちの学校では、部活動の顧問の先生と教科や学級の担任とが協力して、生徒の生活面・学習面の双方を支えているのです」(澤田先生)
 夏休みには、部活の休憩時間に顧問が冷房のきいた教室で宿題をさせたりすることもある。
図2
■図2 尾久八幡中学校 平成16年度の部活動の成績(抜粋)
 平成15年度に全学年を対象に実施したアンケートでは、「部活動をしていると学力が下がると思うか」という質問に対して、約8割の生徒が「思わない」と答えている。(図3)部活動の顧問が、生徒の学習面にも気を配っていることがよい結果としてあらわれている。
図3
■図3 「部活動をすると勉強ができないか」の円グラフ


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