ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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家庭といっしょに子どもを育てていく
 以上のような様々な取り組みが成果として現れるためには、家庭での働きかけやサポートがどうしても欠かせない。現在、新治村を挙げての取り組みのひとつに「スタディタイム」があるが、これは、宿題とは別に、家庭で時間を決めて親子で本を読むなどの知的活動を行うことを推奨するという施策だ。本をいっしょに読んだり、子どもが読んだ話を親が聞いて会話をすることで、コミュニケーションがとれるようになった。斗利出小の6年生は、スタディタイムでの学習を記入したスタディタイムノートを担任に毎日提出し、担任はそのノートにコメントをつけて返している。地区懇談会などの際にも、各家庭でのスタディタイムの過ごし方について、保護者同士情報交換を図ることで、家庭教育へのさらなる理解と協力の姿勢が広まっているという。学校、家庭、地域が互いに連携することで、子どもの育成に向けての多方面からのアプローチが可能となるのだ。
写真3
■写真3 学校だより「おおいちょう」のほかにも、保護者・地域向けのたよりの発行に力を入れる

 アットホームな環境の中で、先生たちのきめ細やかな指導と多くの大人たちのサポートを受けながら成長する「とりでっ子」たち。まさに「地域の中の楽しい学校」を目指す先生たちの熱意が、着実に実を結びつつある。
 
新治村の「学力向上に向けた取り組み」
●行政は、学校の教育の支援を担当
新治村教育委員会では、村内でめざす教育の全体構想図を作成し、全体目標「自ら学び考えて活動できる新治の子の育成をめざして」を定め、現場に伝えている(図3)
図3
■図3 新治村の教育の全体構想図
その上で、行政は教育の基盤を作り、学校現場を支援することが一番の役割と考え、人的な支援と財政的な支援など教育諸条件の整備を行っている。
新治村では、教育委員会の働きかけにより2002年度より3ヵ年の文部科学省学力向上フロンティアスクールの指定を、村内に4つある小中学校全てが受けた。そこで教育委員会としては、以下のような支援を考えた。
(1)全国的なレベルと数値を把握する
教育委員会では、全国的な数値やレベルの把握が学校現場で必要になると感じ、学力調査を村全体で実施した。分析は、それぞれの学校が行ったが、切磋琢磨をしてもらうために全学校分のデータをそれぞれの学校に配付した。
(2)結果の分析を集約
各学校で行われた分析を教育委員会で集約し、方向性の確認を行った。結果として、教科力についても全国比較して遜色のないことが確認できた。また、学習意欲の面でも数値が向上してきた。教職員の意識も高まってきている。
今後の課題としては、学力向上フロンティア校の指定が04年度で終了したあとの取り組みの継続だ。05年度中には土浦市との合併も予定されているが、データに裏付けられたこの取り組みを新しい市になっても継続させていきたいと考えている。
 
「学力調査」の活用と工夫
(1)分析は「考える力」「伝え合う力」に関連する項目を重点的に!
学校全体の達成率、到達度をおさえた上で、「考える力」「伝え合う力」に関連の深い「応用力」や「表現力」の数値を中心的に分析をする。その中で、既習事項を組み合わせて問題を解くことに弱点があり、学校での指導も弱かったことに気づいた。
(2)全員で分析、個別に分析
小規模校の利点をいかして、平均数値にあらわれない個人別の分析も行っている。一人の数値によって全体の数値が大きく変動することもあるため、個人名をあげて分析をする。また、教師全体で分析を行うため、個人に関する情報も分析会で交換される。学校の状況と個人別の状況が、分析会で共有化されるため、次の行動に移りやすいという利点がある。


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