ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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興味を引くテーマの選択と指導法の開発が今後の課題
 義務教育終了の時点までに、子どもたちの「問題解決能力」を向上させたいと考えている第十中学校区では、理科の通常授業においても実験を重視したカリキュラムを組んでいる。研究開発校であるため、カリキュラムを柔軟に組める第十中学校では04年度、1学年で週2時間、2・3学年で週1時間の追加授業で、3学年とも「物質とエネルギーの関係」にスポットを当てた実験重視の授業を行っている。(図4)
図4
■図4 中学校で行った実験重視授業
 03年度は、ポップコーンや電気パンなど食べ物にまつわる実験に生徒の関心が集まった。確かに素材やテーマが身近に感じられたためか、生徒は非常に楽しそうに授業に参加していた。しかし、はたしてそれが本来狙っていた問題解決能力の育成に役立ったのだろうかとの反省の声も上がった。さらに、実際の授業では教師が実験をリードしてしまい、問題意識を持って生徒自らに取り組ませるというねらいが形骸化してしまった部分もある。
 「理科で育んだ問題解決能力が他の教科にも波及することを期待していますが、1年目の取り組みを終えて見えてきたのは、『問題解決を子どものものに』ということの難しさです。問題解決能力を育むには、子ども自身が自らの未知を自ら知にする思考と行動をくり返し体験することが必要不可欠なのです。ただ楽しかったという感想だけで終わってしまったり、教師が『このように思え』とリードしているような授業では意味がありません。自由研究を進めるためにも、純粋な自然科学的要素を持つテーマの選択と、生徒の自主性を促す指導法の研究開発がこれからの課題です」(中井校長)
 こうした活動は保護者からの反応も良いという。
 「保護者には、理科だけではなくその他の教科にも力を入れているということを、保護者説明会や懇親会などの場で積極的にアピールしてきました。確かな学力とは『知識や技能』の習得だけではなく、『問題を解決する力』や『自らを表現する力』を含めたトータルな学力のことであるということが、少しずつ理解されているように感じます」(中井校長)
 寝屋川市は中学校で国・数・英、小学校で国・算の学習到達度調査を実施している。同校でも、この調査を学力向上に生かしながら、今後は、理科の教科到達度と生徒の学習意欲、自尊感情なども調査を通して検証しながら総合的に学力を向上させていく予定だという。
 
「学力調査」(注1)の活用と工夫
(1)長所をほめて、子どもの得意分野を伸ばす指導
校内のデータだけでは見えてこない多面的な子どもの良さを調査を活用することで発見できる。
「生徒の長所や優れた点に関する情報の不足は、いきおい欠点を指摘して改善する指導になりがちです。その結果、目立った欠点はないけれど『あなたの得意なことは?』と尋ねられても答えることのできない、自尊感情の低い子どもを育ててしまった一面があるのではと思います。
学期末の懇談会でも、これまでは子どもや保護者に欠点ばかりを指摘し、そこを改めるように言ってきたことが多かったように思います。個性を伸ばすためにも、学習到達度調査を通して見えてきた子どもの長所や優れたところをしっかり褒めて、得意な事柄や関心の高い分野を伸ばす指導に取り組んでいきます」(中井校長)

(注1)寝屋川市では「学習到達度調査」を実施しているが、このコーナータイトルでは、学力調査としている


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