ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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組織を変革して一担当一人の分掌づくり
 学力向上の取り組みというと、習熟度別・少人数授業やT・Tといった話になりがちだが、大浦小学校はこれだけではない。学力向上フロンティアスクールの指定を受ける前年の02年から、「学力向上は教師の指導改善による」という認識を全ての先生が共有し取り組んでいる。教師一人ひとりの指導力を上げるため、04年度からは組織も大幅に変更し、一人ひとりの役割を明確にした。具体的には、03年度までは「低学年分科会担当」というように漠然とした名称でいくつも仕事を兼ねていたが、04年度からは5つの「専門部会」の中で枝分かれしている役割を一担当一人とした。専門部会の1つである「学力向上部会」は研究全体統括と4つの担当「授業づくり」「学習集団づくり」「学びの基礎力づくり」「ふれあい大浦(総合的な学習)」に分け、担当者4人が中心となり、寺井先生が全体統括としてまとめている。(図1)
図1
■図1 学力向上部会の担当表
専門部会の中に学力向上に取り組む「学力向上部会」が位置づけられる。学力向上部会は、4つの取り組みを推進・実践する担当と、それをまとめる統括担当の計5つに分かれている。一担当一人の役割分担であることがわかる
 分掌ごとにその具体的な取り組みを見てみよう。「学力向上部会」は、「授業づくり担当」「学習集団づくり担当」が中心となって進めている。「授業づくり担当」では、全教科で「課題解決学習」を基本にし、先生が「求める授業像」をまず明確にしていく。「求める授業像」は、1年生は担任が中心となって作るが、2年生以上は子どもと担任がともに話し合ってつくり、教室に掲示したり学校としてまとめた冊子にしている。(写真1・図2)
写真1
■写真1 2年2組の求める授業像

子どもたちの字で書かれた「求める授業像」は、黒板の上に掲げられている。これは、子どもたちが話し合って決めたものだ。各組にも「求める授業像」は貼られている
図2
■図2 「求める授業像」をまとめた冊子
 また課題解決学習では、「今日の1時間は何を勉強するのか」という課題を明確にした上で、自分で考え、考えを出し合う中で目標に到達するよう指導していく。これを全教科で取り組んでいる。
 とはいえ、課題を明確にするのは難しい。そこで、授業づくり担当の先生を中心に「1時限の授業の課題を明確にして授業を展開する」ことを教師の間で決め、基本的なことから徹底しようと取り組んだ。「始めた頃は、課題が明確にならなかったし、教材の本質に迫る課題を設定するという共通理解が難しかったですね。課題が子どものものとなる支援のあり方を考えることは、とても時間がかかります。ようやく3年目になって、課題を明確に設定することから1歩進めて、課題の質について論議できるようになってきました」と寺井先生は言う。


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