ベネッセ教育総合研究所
学校現場が長期休業を意義ある機会とするために 夏休みの指導のポイント
PAGE 8/14 前ページ次ページ


「総合的な学習の時間」や教科の発展としての自由研究
―自ら学び、自ら考える力を身につけるという点では、自由研究のねらいと「総合的な学習の時間」(以下、「総合的な学習」)のねらいは、非常に似ているように思います。両者の関係は、どのようにとらえればいいのでしょうか。

深海 「総合的な学習」では、子どもにとって身近な問題をテーマにして、子ども自身がそれについて調べ、考えるということが大切です。こうした学習を積み重ねながら、子どもは学び方やものの見方を培っていきます。したがって、自由研究でも身近なテーマを選び、「総合的な学習」で身につけた力を使って深めていくことが望ましいと思います。

―自由研究だからといって、いきなり子どもに「自分が興味を持っていることをテーマにして研究しなさい」といっても難しいわけですね。やはり普段から子どもたちがどのような学びをしているかが、ポイントになるわけですね。

深海 もちろんです。実は私も教員時代、「総合的な学習」の題材選びには苦労しました。
  私は都心の小学校で校長を務めていたのですが、カラスが非常に多い地域ということもあり、カラスを「総合的な学習」のテーマにしました。子どもたちはカラスについて調べて、模造紙にまとめましたが、どのグループの発表も似たり寄ったりのものでした。
  ところが一つだけ、まったく違った発表をしたグループがあったのです。理由は、そのグループの子どもの一人が、ゴミ集積場の横を通って学校に通っているのですが、「ゴミの日」にはいつもカラスが集積場に集まっているために、とても怖い思いをしていたらしいのです。つまりその子にとっては「都心のカラス問題」は非常に切実な問題で、自分の生活に結びつく学習だったんです。
  このように、子どもにとって身近で切実なテーマを設定して展開できるかどうかが、自由研究でも鍵になります。問題意識の持ち方や、調べ方を身につけた子どもは、自由研究に対する取り組みもまったく変わってくることが期待できます。ただ本来は「総合的な学習」だけでなくあらゆる教科において、子どもが疑問に感じたことを自ら深めていけるような機会を多く設けるべきでしょうね。
  それができれば自由研究も、単なる夏休みの宿題ではなく、「総合的な学習」や教科の発展学習として、優れた教育的効果を持つことになると思います。


PAGE 8/14 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse