つながる学校と家庭の学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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保護者の出席率は95%

 親子科学教室は、子どもはもちろん、保護者にも好評を博している。
 「授業参観とは違う雰囲気の中で、子どもが真剣に取り組む姿を見ることができた」「理科的なことに子どもがこれほど強い関心を示したことは、今までになかった。嬉しい発見だった」「家では子どもと一緒に工作をしたことはなかったので、こういう機会を持ててよかった」といった感想が、この日参加した保護者から寄せられた。
 同校の保護者には共働きが多いが、今回の科学教室への保護者の出席率は95%。一緒に苦労して一つのものを作り、完成を一緒に喜ぶという体験は、親子のコミュニケーションのよい機会になると、保護者にも認知されているようだ。
 また、保護者が出席できなかった子どもには、友だちや近所の顔見知りの保護者が支援する。近年は、東京への通勤圏として新しい住民も増え、かつてのような近所付き合いが希薄になりがちな中で、地域の交流が生まれるきっかけともなっている。

理科教育の導入という位置付け

 教師にとっては、授業の進め方のヒントが得られる機会にもなっている。「科学教室は『こんな教え方もあるのか』と気づきにつながる部分も大きい」と、嶋山先生は話す。
 学習への影響についてはどうだろう。嶋山先生は、子どもたちの間に学習意欲の向上が見られたことを指摘する。
 「授業中はぼんやりしているような子どもも、真剣に話を聞いているなど、強い関心を示していました。工作にも自分から進んで積極的に取り組んでいる様子でした」(嶋山先生)
 今田先生は、「親子科学教室」の教科学習における位置付けを次のように説明する。
 「今日の実験は、あくまで理科教育の導入という位置付けです。理科の学習は始まったばかりですから、今の段階では原理まで理解できなくてもよいと捉えています。5年生、6年生になって、授業で関連する単元が出てきたときに、『科学教室での実験はこういうことだったのか』とつながりが見えればよいと考えています」
 子どもは驚いたことや楽しいことはよく覚えているものだ。科学教室のような体験があれば、机上の理論として原理を教わるだけよりも理解は深まるだろうし、学習内容にも関心を持てるだろう。
 科学の会の峰さんは、「私たちは教育の専門家ではありませんから、理論は説明しません。その代わり、授業ではできないような、楽しさを重視した応用実験を行うことを意識しています。この活動を通して、子どもたちに『科学って面白いんだ』という種をまければよいと思っています」と話す。
 同校には「理科おもしろ実験クラブ」というクラブ活動があるが、これは3年前に親子科学教室を体験した子どもたちの要望を受けて発足した。このクラブ名は、「総和おもしろ科学の会」を意識したものだ。
 峰さんは、「さっき廊下で、昨年の科学教室に参加した4年生とすれ違いました。私たちのことを覚えていたらしく、『今日も実験やるの?』『また見たいな』などと声をかけてくれたんですよ」と目を細める。
 子どもたちの科学への興味・関心を育てるための同会の活動は、名崎小学校で確実に実を結びつつあるといえるだろう。

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