ベネッセ教育総合研究所
特集 小・中の壁を超える中1・1学期の指導 とは?
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小・中連携で子どもたちの情報を的確につかみ
中学校での指導に生かしていきたい
玉置 初期指導でもう一つ重要な観点は、子どもたちの出身小学校が複数であることへの対応です。家庭学習習慣や教科学習での指導、あるいは生活指導においても、各小学校によってずいぶん差がありますから。
 私の担当教科は数学ですが、以前勤めていた学校でこんなことがあったんです。1年生の数学で最初に習うのは、「正の数と負の数」です。スタート時期が大切なので、点数がよくなかった子どもに朝の補習をすることにしました。すると、補習にやってきた子どもたちの顔ぶれを見たとき、ある小学校出身者に偏っていることに気づいたんです。もちろんその小学校には報告し、今後の指導について相談をしました。
牛田 複数の小学校から入学してくる子どもへの対応としては、まず、各小学校の教科面や生活面での指導の特徴を早い段階で中学校側が把握することだと思います。それをベースに、中学校としての指導方針を定めればいいわけです。そのためには、やはり、小学校と中学校の先生同士が顔を突き合わせて、自分たちの思いを率直に語る場を設定することが必要です。
 私の勤務校では、04年度から、学区内の小学校と小・中連携の取り組みを始めています。そこで強く感じるのは、小学校の先生方は中学校の意見を聞きたがっているということです。一方、中学校の先生は、「自分たちが本音を言うと、小学校を批判しているように受け取られるんじゃないか」と考えて遠慮をしがちです。小・中連携は、子どもに必要な力をつけるためにどうすればいいかを一緒に考えていく場ですから、連携を通じて情報共有をスムーズにすることが必要です。
 連携事業では、教科指導についての共同研究を行う「教科研究部」、「総合的な学習の時間」をテーマにした「総合学習部」、そして「生活部」の三つの部会を設けています。また学期に1回は合同職員会を開催しています。
田中 そうするとカリキュラムの連携もしていくわけですか。
牛田 はい。いま、小学校でも英語活動が始まっています。そこで私の学校の英語科の教員が、英語活動のプランを小学校に提示する予定になっています。もちろん「このプランでやりなさい」と指示するのではなく、あくまでも提案ですが…。
牛田 小学校の英語活動は歌やゲームなどを主にしたコミュニケーション活動が中心ですね。一方、中学校は知識・理解の学習が中心だから、そこにギャップを感じてしまう子どもは多いと思うのです。ですから小・中学校の先生が共同で指導方法の研究をして、両者のギャップを埋めていくのは大切なことですね。中学校でも、1年生の初期段階は、もう少し活動に比重を置いた授業のほうが、生徒も適応しやすいと思います。これは、ほかの教科についてもいえることですが。
玉置 情報の共有という点では、小学校から提供される新入生に関する情報が乏しいと思います。中学校では、その乏しい情報をもとに、最初の学級づくりをしなくてはいけません。
牛田 そうですね。入学前に小6の担任の先生から教えてもらえるのは、それぞれの子どもの学習面と生活面についての若干の情報、リーダー性、特技、指導上とくに配慮が必要なこと…、これくらいですね。
玉置 指導要録の所見も、それほど豊富な情報が記載されているわけでもありません。
 私が03年度まで勤務していた小牧中学校では、子どもたちの「いいところ見つけ」をしています。学習面はむろん、掃除や係活動などの生活面でも、「この子はここが素晴らしいな」というところを教職員が見つけたら、パソコンのデータベースにその都度記録していきます。すると、その子に対する先生たちの評価が蓄積されていくのです。
 もし小学校でも同じシステムを導入できれば、その子に対する6年間の評価が蓄積されますね。そのデータを中学校が受け継ぐことによって、入学直後から一人ひとりのよさを踏まえた指導ができると思うんです。まあ、これは実現するかどうかわからないのですが、小・中学校の間で情報を共有化していくためのシステムづくりについても、今後は小・中双方で考えていく必要があるでしょうね。


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