| 設置認可申請一覧～72校が初年度新設へ |
| 2003年7月29日に法科大学院協会設立準備会から、来春開校予定のロースクールの個別試験日程が、会員アンケート集計結果として公表された。次ページの一覧表は、これに文部科学省の発表や編集部独自の調査を加えてまとめたものである。この一覧表をもとに、ロースクールの設置形態、入学定員、入試日程などについて、全体的な傾向を見てみる。 |
1 設置地域
24都道府県で設置申請なくゼロワン地域解消は難しい情勢 |
2004年度の開設を目指して文科省にロースクールの設置申請を提出したのは72校だ。内訳は国立20校、公立2校、私立50校となっている。
設置地域は、東京都の25校を筆頭に、大阪府7校、愛知県6校、京都府が5校と、首都圏、近畿圏の都市部に集中した（図表）。一方で設置申請がない都道府県は24に上っている。そのほとんどは、従来から法曹人口の少ない都道府県であり、司法制度改革審議会が発足当初に課題の一つとして掲げ、議論を重ねていたゼロワン地域（弁護士がゼロまたは1人しか存在しない地域）の解消にはつながっていないことが分かる。
ほとんどは学部キャンパスと同じ都道府県に設置するが、青森大学、埼玉県の駿河台大学はいずれも東京で開設、また龍谷大学は地元・京都に加え東京でも開設し2キャンパス制にする予定である。 |
 |
2 入学定員（既修／未修）
既修・未修別枠募集でなくても教育は分けて行う大学が多い |
入学定員が多いのは、東京大学、中央大学、早稲田大学の300人。以下、慶應義塾大学260人、京都大学、明治大学の200人と続く。いずれも、現行司法試験で高い実績をあげてきた大学だ。一方、定員数が最も少ないのは30人で、島根大学、香川・愛媛大学、熊本大学、鹿児島大学、琉球大学、白鴎大学、中京大学が少数精鋭教育を目指す。
入学定員は、既修者（2年制）と未修者（3年制）の枠を分けて募集する大学が多い。また、社会人や他学部出身者などを対象とした特別枠を設ける大学もある。
2年制の既修枠をあらかじめ設定していない大学でも「最終合格者を決定した上で、法律科目試験により50人程度を2年課程に入学させる」（北海道大学）など、実質的には既修・未修を分けて教育する大学が多い。
ただし、琉球大学、大宮法科大学院大学のように既存の法学部を持たない大学や、鹿児島大学など、3年コースのみを設置する大学もある。これは、法学部出身者を受け入れないということではなく、既修・未修を問わず、3年間じっくり教育して、実力をつけた上で新司法試験に臨ませたいという考え方によるものだろう。
すべてのロースクールが、申請通り認可されれば、入学総定員は5950人になる。一方で新司法試験の合格者数は10年度段階で約3000人とされ、ロースクール以外からの受験者もいるため、ロースクールを修了しても法曹になれるのは約3割と推計する関係者も。このため「7、8割の合格率を掲げた当初の構想は瓦解した」という指摘も聞かれる。 |
3 入試日程
有力校の試験日重複が目立つ |
入試日程設定にあたっては、各大学の様々な思惑が交錯した。
法科大学院協会設立準備会では、03年6月10日締め切りで1回目の入試日程アンケートを実施し（加盟校104校中回答数59校）、会員校に回覧した。7月29日公表の第2回アンケートでは、1回目の結果から他校の動きを見据えて、入試日程を再検討した上で回答した大学も多いようだ。
その背景には「初年度であり、設置認可後に募集要項を配布しなければならないタイトなスケジュールから考えると、12月の試験実施は実際には困難です。また、社会人も対象になるため、土日の実施が中心になります」（同準備室入学者選抜担当連絡会幹事・山野目章夫早稲田大学教授）など、様々な制約があったことも関係している。大学院側は、限られた期間内で、競合校との日程重複を避けて、より多くの志願者を確保できるよう調整する必要があったわけだ。
「様々な制約があったことを考えると、試験日は比較的うまく散らばったと思います」（山野目教授）というコメントからも、大学にとってこの2回のアンケートが有効であったことがわかる。
だが、有力校では異なる状況も生じている。むしろライバル校とあえて試験日を重複させる動きが顕著になっているのだ。例えば、国立大学では東京大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学の試験日が重なっている。私立大学でも慶應義塾大学、中央大学、早稲田大学の併願ができない。明治大学、立命館大学、関西大学の試験日も重複している。これには、優秀な受験者に自校を第一志望で受験してもらおうとの狙いがありそうだ。
もっとも現段階では、入試日程の候補を複数あげたり、1月中旬等と幅を持たせて公表しているケースも少なくなく、まだ流動的な面もある。 |
4 適性試験の採用状況
大学入試センターの適性試験の採用率は100％ |
ロースクール受験者には、適性試験の受験が義務づけられる。合否はこの適性試験と個別試験によって判定されるが「第1段階選抜として、適性試験の成績で最終合格者の2～3倍程度を選抜し、それに合格した者のみが個別試験を受験できる」（大阪大学一般選抜）といったように、いわゆる2段階選抜として利用されるケースも少なくない。
適性試験には、大学入試センターと日弁連法務研究財団がそれぞれ実施するものがあり、以下のように、大学ごとに採用する試験は異なる。
・センターのみを採用 25校
・センターを採用するが、財団成績も考慮する 17校
・財団のみを採用 0校
・センター、財団ともに可 30校
個別試験は、小論文・面接を課す形態が一般的で、既修者に対しては法律科目試験を課す大学がほとんどだ。 |
5 学費
国立は70万～80万円
値下げに踏み切る私大が登場か？ |
最後に、一覧表には掲載していないが、学費についても触れておこう。
文科省は国立のロースクールの年間授業料の標準額を70万～80万円で検討している。
一方の私立大学は、公表しているところだけを見ると、150万～200万円に集中している。東北学院大学142万円、慶應義塾大学・明治大学200万円程度、桐蔭横浜大学180万円、南山大学165万円といった具合だ（8月7日現在）。
国立と100万円前後の差がつくことで、値下げに動く私立大学も出てくる可能性がある。
先に公表されたように、名古屋弁護士会の会員有志が中部地区のロースクール合格者に対して年間200万円を貸与し、司法試験合格後にゼロワン地域に3年間赴任すれば返済を免除するといった制度も誕生しているが、こうした奨学金制度が今後どの程度広がるか注目される。 |
