| 駒澤大学法科大学院 |
３年間と同額の学費で最長６年間の長期履修が可能
ロースクールには多様な学生が集まることが期待されているが、原則３年間の履修期間は社会人にとっては就学上の大きな壁になる。そこで駒澤大学法科大学院では、４～６年かけてそれぞれのペースに合わせて学べる長期履修制度を導入する。
同大学院でも標準は３年間で94単位を修得するコースで、修得単位数や成績など厳しい進級条件が課される。「基本的には法科大学院の教育はフルタイムで勉強しないとこなせないハードなものです。しかしそうしたコースしかなければ、入学できる人は限られてしまう。そこでオプションとして、１年間に修得できる単位数を少なめに設定して、余裕をもって履修できる制度を設けたのです」。設置準備室長の山田泰彦法学部教授は、導入理由をそう語る。
長期履修学生は入学時に４年、５年、６年の３コースの中から選択し、提出する長期履修計画書に沿って学ぶ。授業料の総額は３コースとも標準コースと同額のため、年間授業料は安くなるが、施設費は単年度ごとに必要になる。最初に選んだコース年限で修了できない場合、超過１年ごとに標準コースの年間授業料を支払うことになる。最長の6年間で修了できない学生は自動的に除籍となる。
長期履修学生には、多忙を極めるフルタイムの企業人は想定していない。昼夜開講や日曜日の授業は設定しないため、比較的時間に融通がきく職場や部署で働く人や主婦、無職の人が主な対象となりそう。「法科大学院の基本的な使命は、様々なタイプの人に法曹への道を提供すること。長期履修制度によって多様な学生が共に学び、切磋琢磨してほしい」。
学生への経済的支援としては、２種類の学費ローンを設定する。リーガルクリニックやエクスターンシップなどの実務教育で提携関係にある第一東京弁護士会の協力により可能になった。「授業料限定型」は３年間分の授業料を限度として、無担保で大手の信用組合から融資を受けられる。金利は年４％だが、司法試験合格後には３％になる。一方、「生活費対応型」は生活費まで含めて1300万円を限度として借りることができ、金利は年3.5～9.0％の間で設定される。いずれも在学中は金利のみを返済すればいい
“出世払い”となる。 |
| 桐蔭横浜大学法科大学院 |
未修・既修を区別せず３年間“法曹になるための教育”を
桐蔭横浜大学法科大学院では法学既修者を対象とする２年制を設けず、３年制を基本として70人を募集する。法学部出身者も、未修者と同様に３年間みっちり教育しようというわけだ。「そもそも法科大学院の議論はアメリカの制度をモデルに、修了者にのみ司法試験の受験資格を与えるという発想から出発したはずで、我々はそこに全面的に賛同した。本来の理念に照らせば既修・未修に関わらず３年制にするのは必然であり、検討過程でも全くぶれていません」。学務部長の山城崇夫法学部教授はそう説明する。
その前提には、「日本の大学の法学部では法曹養成を目的とした教育は行われていない」（同教授）という認識がある。同大学の法学部が、「法曹養成を目指す日本初の法学部」を掲げて開設されたのが1993年度。六法を必修化、リーガルクリニックなどの臨床教育、模擬裁判や法律文書起案にも力を入れ、「ロースクール教育を先取りしてきた」と自負する。
当初こそ司法試験合格者も出したが、大学生全般の学力や目的意識の低下が指摘される中、学部レベルでの法曹養成という理念と現実とのギャップを認めざるを得ないという。「ロースクール制度は本学にとって好機到来。10年間の蓄積を土台にブラッシュアップし、大手の大学と同じスタートラインに立つという心意気で臨む」。
この間築いたネットワークを生かし、専任教員23人中12人を最高裁判事経験者など実務家教員で固めた。知的財産の教育には特に力を入れ、担当の専任教員を２人確保。ITを駆使したサイバー・コートで、海外のロースクールとの模擬裁判も授業に導入する。
目指すのは「ハイブリッド法曹」の養成。法律以外の専門知識を備えた人が、法曹に必要な知識と人間的な厚みをつけるというコンセプトだ。一級建築士や医師の資格を持つ弁護士が、それぞれの専門性を背景に建築紛争や医療過誤に取り組む、というビジョンを描く。
現役社会人を念頭に、仕事と就学の両立を最大限支援する。基本は３年制だが入学時に５年制コースが選択でき、平日夜間と土曜日の履修で修了することも可能。六本木にはサテライトキャンパスを確保する。金融機関との提携で、授業料については低金利での教育ローンも利用できる。 |
| 龍谷大学法科大学院 |
市民のために働く法律家を京都と東京で養成
龍谷大学法科大学院は「市民のために働く法律家の養成」を教育理念としている。司法試験予備校として実績のある法学館伊藤塾の協力を得て、第１専攻（京都校）と第２専攻（東京校）の２拠点でスタートする。
京都校では従来の法学教育の成果を継承しつつ、弁護士過疎や刑事弁護を中心に地域社会のニーズに応じた法曹養成を図る。一方、東京校では未修者や社会人、女性に対しても広く学習機会を提供するため、国際人権法やジェンダーを重視した個性的な法科大学院を目指す。入学定員は両校とも50人で、履修期間は原則３年間とする。
入学前の「ゼロセメスター」、卒業後の「第7セメスター」も含めたフォローアップ教育が大きな特色だ。ゼロセメスターでは、憲法、民法、刑法といった基本三法に関する授業を100時間程度にまとめた映像教材等を用いて導入教育を支援する。一方、第7セメスターでは卒業後のアフターケアの中で新司法試験の受験対策を支援する。
在学中の教育については、実務家教員12人を含む37人の専任教員の下、エクスターンシップを必修化。経験豊かなTAやチューターによる指導を行う予定だ。
設置委員の石塚伸一教授は「優秀な研究者や実務家教員にとっても受験対策の指導は簡単ではありません。法科大学院で司法試験合格のためのフォローができなければ、学生は予備校に行ってしまい、授業に出なくなります。現在のようにダブルスクールが常態化したのは大学の責任でもあり、予備校に学ぶべき部分は学んで、真摯に教育を改革すべきです」と説明する。
学費は年間170万円（初年度は別途入学金20万円が必要）。「すべての人が自らの責任と負担で法律家になれる」をスローガンに、全員に無利子の貸与奨学金を準備するとともに、成績優秀者には学費の半額免除の給付奨学金を提供する。
また、大阪府の西成地区のような弁護士過疎地域などで公益的活動に従事した修了者には、奨学金の返還を免除するプロジェクト奨学金制度も整備する予定だ。
石塚教授は「10年後、卒業生たちが法曹として活躍し、優れた実務家教員として帰ってきてくれることを期待している」と話す。 |
| 琉球大学法科大学院 |
徹底した少人数教育で地域特性に対応した法曹を養成
ロースクールの設置基準では、専任教員12人以上、教員一人当たりの学生数は15人以下となっている。最低基準で算出しても入学定員は60人まで設定可能だが、琉球大学法科大学院では30人に抑えた。設置準備室長の島袋鉄男教授は、「地域の需要と供給のバランスもあるが、エクスターンシップなど実務教育の受け皿となる県内の法律事務所の規模を考え、十分な教育ができる人数に設定した」と、教育効果を最大限考慮した定員設定であることを強調する。
この学生数であれば専任教員の最低基準が12人となるところ、実務家教員7人を含む19人を確保。収容定員でみると、教員一人当たりの学生数は4.7人と、設置認可を申請したロースクールの中でも少人数教育が際立つ。
法学既修者と未修者を分けず、全員が３年間のカリキュラムで学ぶ。「様々なバックグラウンドを持った学生を受け入れるという法科大学院の基本理念に忠実でありたい」（島袋教授）との理由からで、入試でも法律に関する問題は一切出題しない。１学年１クラスだが、演習は１クラス15人の２クラスとし、徹底した少人数教育で法律家としての基礎と実践力を養成する考えだ。
地元・沖縄では、在日米軍基地の集中によって、騒音や米兵によ事件・事故など特異な問題が山積している。一方で、古来からアジア・太平洋に開かれた国際都市という独自性も。こうした地域の特性を踏まえ、「地域にこだわりつつ、世界を見る法曹人」の養成をキャッチフレーズに掲げる。具体的には、日常生活上の問題に対処する「ホームロイヤー」と、国際的な法曹としての「インターナショナルロイヤー」の２タイプの法曹養成を想定したカリキュラムを用意する。
アメリカのロースクールの教授が英語で講義を行う選択科目も開設する。「ハワイ大学との連携で、学生の相互派遣なども将来的には考えたい」（島袋教授）と、国際的な教育ネットワーク強化も視野に入れる。定員30人のうち5人を特別枠として、英語能力の特に優れた学生を選抜する。
１年次からソクラテスメソッドを導入、教員との対話を通して問題を解決する能力を高める。３分の２以上出席しないと単位認定しないなど、厳しい成績評価で臨む。 |
