| Report（4） 能力開発総合講座 名古屋学院大学 |
夢の発見→追求→実現の過程を
3年間の体系的プログラムで支援 |
| 名古屋学院大学では、入学直後から3年次まで段階を踏んで学ぶキャリア支援の体系的プログラム「能力開発総合講座」を開講している。選択科目として正規カリキュラムの中に位置づけ、毎週1回開講、単位認定する。 |
| 単位認定への理解が広がる |
キャリアセンター長の三枝有（たもつ）教授は、「現在の学生は、自分の人生について深く考え何をしたいのか気づく機会が少なく、気づいたとしてもどの方向に進んだらいいのか決めるための情報や知識を持ち合わせていない。それなら必要なものを全部提供すべきだと考えたのです」と、能力開発総合講座を導入した狙いを話す。
学力や職業意識の低下は同大学でも例外ではなく、対策として自らのキャリアについて考えさせる機会の提供を考えたという。「社会では大学4年間トータルの成果が問われるため、1年次から将来を意識して夢をはぐくみ、出口を目指してほしい。この講座は夢を実現するための方策の一つです」
能力開発総合講座は、就職部をキャリアセンターとして機能強化した2001年度に始まった。開学以来30年以上、年間約15回の体系的な就職ガイダンスを行ってきた実績を踏まえ、当初は就職に必要な一般教養的な科目を中心にしたプログラムを組んだ。
02年度は、前期（1年次は後期）に教養科目、後期にキャリアガイダンス（2年次）や就職ガイダンス（3年次）とつなげるスタイルに。しかし、単位として認定される正規科目と認定されないガイダンスの組み合わせがモチベーションを上げられず、継続的に受講する学生は少なかった。そこで、03年度は内容を全面的に見直し、ガイダンス機能も含めたキャリア教育プログラムとして、通年化と単位化を図った。また、いずれも単位として認められるインターンシップと資格取得プログラムを同講座と有機的に結びつけ、総合的なキャリア支援の体制を整えた。
就職ガイダンス的な講座に単位を与えることには当初、教員の間で異論も出た。三枝教授は、「社会に出ることが学生の最終的な目標である以上、そこで役立つ学問を教えることは大学の役目。実際に講座を続けるうちに、この講座が専門科目で教えた内容を実社会で役立てるためのものであり、専門の幅を広げる教養科目と同じようなものだという理解が教員の間にも広がりました」と話す。
03年度前期の受講者は、1年次517人、2年次500人、3年次493人で、就職希望者の7割以上に上っている。こうした学生の反応を踏まえ、キャリアセンター内には「必修化すべき」との意見も出ているという。 |
| 学長・学部長の授業で大学への誇りが生まれる |
03年度の能力開発総合講座は、1年次のテーマが「夢の発見」、2年次は「夢の追求」、3年次は「夢の実現」と、ステップアップする形のプログラム。
1年次は、自己理解・自己発見の時期と位置付け、自らの興味や適性を把握すると同時に、就職について主体的に考え、社会常識を身に付けるための講義が中心になる（図表）。 |
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前期の「能力開発総合講座1a」の2回目「名古屋学院大学とは？」では学長が講師を務める。さらに、宗教部長もキリスト教系大学としての理念を話す。これらは、各学部長による「学部の特色と学び」の授業と合わせ、予想外の反響があった。「こんなに素晴らしい大学に入ったのか」「自分の学部のすごさを初めて知った」などの感想に、講師たちも大感激だったという。
「話した内容は大学案内にもあるし、入学時のガイダンスでも説明している。でも自分のキャリアと結びつけて考えることで、学ぶ環境に初めて現実的な思いをはせるのかもしれません」と三枝教授は分析する。第一志望で入学した学生はもちろん、そうでない学生でも、大学に誇りを持つことができれば、4年間の学びのモチベーションは大きく変わるはずだ。
卒業生に、金融、警察、外食産業などそれぞれの仕事について話してもらう授業も好評だった。この種の企画は従来3年次対象のことが多く、就職活動のノウハウ伝授になりがちだった。1年次に設定することで、職業イメージを膨らませ夢を描く機会になる。「夢の発見」を促した上で自己発見レポートを実施し、自分の個性・適性について考えさせる。キャリアセンターでもレポートの結果を分析し、学部ごとに活用する。
1年次の後期には、教養的な知識を養う授業が増える。政治、経済、社会事情、国際事情など世の中を知ることで、自分の夢を現実と結びつけ、より具体化してもらうことが目的だ。
2年次は、職業観育成の時期として具体的なビジョンを描くことに力点を置く。授業では、夢を実現するための資格などの紹介が増える。前期は「仕事と業種」「就職試験概要」など、より具体的な内容でモチベーションアップを図る。後期には「一般常識」「コミュニケーションの意義と実践」「プレゼンテーション」などで実践的な知識を深める。
3年次は、目標を絞り込み実際に行動する段階と位置付ける。「履歴書の書き方」「エントリーシートの書き方」「ビジネスマナー」「面接・面談最終対策」などスキル系の授業が中心になる。
同講座の拡充によって就職ガイダンスは今年度から廃止。講座を履修しない学生が就職ガイダンスを受けられないという不都合が生じないよう、3年次の講座は他の授業と重ならない時間帯に設定、自由に聴講できるようにした。 |
