| 「進路セミナー」の教材を 連続した正課の授業に |
京都産業大学の就職部が進路センターに変わったのは、2000年の10月。いわゆるバブル期に就職部の業務を経験したこともある今井事務部長は「学生自身が将来の進路をどのくらい考えているのか疑問に思った」と言う。就職部も単に就職活動をサポートするだけでなく、学生がいかに社会と関わるかを重視した取り組みが必要だと感じるようになった。こうした機運は学内にも高まっており、新入生から一貫したキャリア教育を行う部署として進路センターが発足した。
同時にキャリア教育を授業科目に組み込む試みが始められた。00年10月には経営学部の3年生を対象にした「現在企業のマネジメント」を設置。卒業生によるリレー講義が行われた。翌年10月には経済学部2年生対象の「経済人特別講義」、1年生対象の共通教育科目「21世紀と企業の課題」が開講され、02年4月には1年生対象の共通教育科目「現代社会における職業観」、10月には理学部学生を対象とした「科学の機会」が開設された。
課外である進路セミナーも00年10月から実施された。この時の教材が「プロジェクトX」の番組で、現在の「チャレンジ精神の源流」へとつながる。「実際、学生はあまり『プロジェクトX』を見ていないんですね。ところがセミナー後のアンケートで、『これまで熱中することはカッコ悪いことだと思っていたが、そうではないことがわかった』という意見が多く、ショックを受けたのです」と今井事務部長は振り返る。学生に早期からこうした刺激を与え、意識を変えていくことは、大学教育に必要なことで、正課として取り上げてもいいのではないかと判断。一般教育研究センターに働きかけ、03年4月から共通教育科目となった。 |
「チャレンジ精神の源流」で講演するNHKの山本隆之ディレクター |
「チャレンジ精神の源流」のレポートには「感動した」という感想が圧倒的に多いという。これに関し今井事務部長は「『感動した』とは書いてきますが、もう一歩踏み込んで、そこから自分がどう考え、どう行動するかを期待したいものです。ゲスト講師のみなさんも同じ感想を持ったようです」。
今後の課題は、番組から受けた刺激をどう行動に結びつけさせるかにあるという。今井事務部長は教員と学生とのより深いコミュニケーションを重視する。入学時から自己分析を行う「自己発見レポート」をさらに活用する方法の開発や、ゼミなどの小集団を対象にした「ミニガイダンス」などに力を入れていくという。また、4年間を通じて、学業とインターンシップを交互に組み合わせて行うプログラム「オン／オフ・キャンパス・フュージョン」が教務部で開発され、新しい試みとして期待されている。
今井事務部長は、クラブに入ることも一つの解決法になると指摘する。「クラブも企業と同じ組織です。加入することで組織のあり方を学ぶことができますから」。ただ、経済状況の悪化や自宅通学者の増加により、クラブ加入者は減少傾向にあるという。「今後は、クラブに所属する意味やメリットなどをもっと意識化できるようアドバイスしていきたい」（今井事務部長）。 |
| スポーツの「感動」を核に大学への帰属意識を高める |
進路センターが、事業やものづくりへの挑戦が与える感動を通じて学生に「気づき」を与えているのに対し、「スポーツの感動」をスローガンに学生の意識高揚を図ろうというのがスポーツ推進室だ。
同室は00年4月に新たに設置され、学内のスポーツ活動支援に特化した活動を始めた。業務の一つにスポーツ推薦で入学した学生の支援がある。
スポーツ推進室の川合徹室長は「入学させたらそれで終わりではなく、“入学から卒業まで”をコンセプトに、卒業まできちんと面倒をみていきたい」と語る。とはいえ、競技・運動能力の向上と学業との両立は容易ではない。そのため推進室では、学業成績をクラブの指導者にフィードバックしたり、スポーツ活動と両立しやすいカリキュラムのあり方について教務部と協議を進めているほか、進路センターとタイアップして、スポーツクラブの学生を対象としたセミナーの開催も働きかけている。
京都産業大学の運動系クラブは現在48部。全国レベルのビッグゲームに進出すると、推進室は応援活動のサポートに回る。クラブに加入していない一般学生は、自分の大学を応援することにより「感動」を共有することになる。今春、硬式野球部が関西6大学リーグで優勝し、全国制覇をかけて神宮球場に駒を進めたときは、10台の応援バスを出した。「応援は一般の学生が8割、その半数近くは女子学生でした。スポーツを通じて学生や教職員、卒業生、選手が一体になることで、母校への帰属意識がいっそう強まるのだと思います」（川合室長）。
さらに、専用のWebサイトを立ち上げ、試合結果の速報はもちろん、選手のコメントなどもできる限りフォローし、重要な結果はニュースとして画面に流している。川合室長は、「スポーツの情報を共有することで、学生同士、学生と教員のコミュニケーションが以前に比べて盛んになってきたようです」と語る。
今年度から、地元の中学生を対象に、バレーボールやバスケットボールの「スポーツクリニック」を開催したり、馬術部と連携して不登校の児童に対する「馬とのふれあい教室」を開くなど、地域社会との交流を進める。
今後は、グラウンド整備などの設備面も含め、スポーツをベースにした学生満足度の向上に貢献していきたいとしている。 |
