特集 満足度を高める学生支援
大阪国際大学
Betweenは(株)進研アドが発刊する情報誌です。
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Report(7) エンカレッジ教育 大阪国際大学
学生を元気づけ“やる気”を引き出す
エンカレッジ教育のパイオニアを目指して
エンカレッジ(encourage)とは「勇気づける」「励ます」という意味で、学生のやる気を引き出し、サポートする教育手法がエンカレッジ教育と呼ばれる。日本においてはまだなじみが薄いが、アメリカでは、中学校・高校にあたる段階から取り入れられ、広く浸透しているという。大阪国際大学ではこれをいち早く導入している。不本意入学などで学習意欲や自信を失った学生に対して、元気づけ、自信を持たせるためのコミュニケーショントレーニングを実施し、3年次でのキャリア教育につなげていく。
自分の考えを自分の言葉で語れるように工夫
 「エンカレッジ教育においては、講師はヘルプではなく、サポートに徹します。例えば何か課題や悩みがあったとき、代わりにしてあげるのがヘルプです。それに対して、君ならできる、やってみようと励まし、どうすればやれるのかを考え、実行できるように応援するのがサポートです。その結果、自己の可能性に気づくとともに、応援してくれた周囲への感謝もできるようになるのです」と語るのは、大阪国際大学のエンカレッジ教育のプログラムを作った専任講師の東田晋三助教授だ。東田助教授は長年、民間企業のキャリア開発部門に勤務し、退職後、アメリカのジョージア大学でキャリア教育の研究に携わってきた。
 エンカレッジ講座は1年次から3年次まで開講され、前・後期で各10回の授業が行われる。学年ごとの目標を立て、さまざまなプログラムを通して学生たちが自発的に課題に取り組み、解決策を考えることの面白さに気づき、自分の考えを自分の言葉で語れるように工夫されている。
 1年生に対しては、まず元気づける、勇気づけることから始める。「気づき」を中心に、自分の可能性と社会との関わりに興味・関心を持てるような動機づけプログラムとなる(図表)。
 例えば第4回の授業「協力と共有」では、目標を達成するためには周囲の人との助け合いが重要だということを理解するために、アイマスクをつけた学生が障害物のある教室の中を誘導役の学生と一緒に歩き回る。そのとき、誘導役の学生は手拍子も使いながら、アイマスクの学生を誘導する。そしてその様子を別の学生が観察し、誘導の仕方をアドバイスする。アイマスクの学生は行動するにはいかに周囲の手助けが必要かを知り、誘導役の学生は的確に意図を伝えることの難しさを知り、観察する学生はアドバイスの難しさを知る。この一連の行為を役割を変えて体験していく。
 「まずワークをさせて感じ取らせ、感じ取ったことについてグループディスカッションをさせます。そこで出てきた感想や意見について講師が感想をのべ、理論的な解説を行います。そして再度、同じワークをさせて確認させます。学生たちはこの行為を繰り返すことで、次はもっとうまくできるように頑張ろうと学生たちはやる気を出すようになります」と東田助教授。
 2年生は、「自己の表現力アップ」を中心に、コミュニケーション力の養成プログラムとなる。ライティングスキル(書く技術)、オーラルスキル、アサーション(自分も相手も尊重した自已表現法)、パフォーマンス(演技力)など、自己を表現するためのコミュニケーションの手法を学ぶ。ライティングスキルの授業では、学生は課題についてのレポートを毎回提出し、講師がコメントを入れて返す。これによって最初は文章表現が苦手だった学生が、最後はもっと書きたいというようになるという。
 そして3年生は、キャリア理論の理解と実践を通し、社会人として必要な自己認識と自己表現力の養成を図るプログラムとなる。模擬ディスカッション、業界研究、模擬面接、エントリーシートの書き方などの講座を通して、ビジネス一般の基礎知識とキャリア理論を学ぶ。なお、2003年度の後期からは4年生向けのプログラムも開始。これは、企業の新人教育に近いものを、事前に大学で行う試みだという。
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