| 先輩のプレゼンテーションで受講申し込みが殺到 |
エンカレッジ教育を担当するエンカレッジセンターは01年に開設した。同センターのマネジャーの武内一雅氏によると、当初は資格取得など具体的なスキルアップを支援するエクステンションセンターの発足が検討されたという。しかし、この種の機関はすでに多くの大学でできており、独自のカラーを打ち出すのは難しいと判断。代わって浮上したのが、エンカレッジ教育だった。
「開講した当初は学生たちの関心も低く、受講者数は28人。それも自主的に応募してきたのは10人だけ。残りは、興味を持った教員が自分のゼミの時間を使って、学生に協力を仰いでくれました」と武内氏は振り返る。
この状況が一変したのは、エンカレッジ講座として正式にスタートしてから2年目の03年4月のこと。就職部が主催した3年生向けのオリエンテーションで、前年度に同講座を受講した4年生4人による受講内容についてのプレゼンテーションを聞いて、受講申し込みが殺到したのだ。
「プレゼンテーションをした全員がすでに複数の内定を得ていたこともあり、『受講すれば就職に有利になるのでは』という心理も働いたのでしょうが、自らの体験を交えながら堂々と話す彼らの姿は、3年生にとって衝撃だったようです。結局、177人を5クラスに分けて開講したのですが、教室の確保が間に合わないほどの盛況ぶりでした」と武内氏。 |
| 教員にも広がったエンカレッジ教育の手法 |
エンカレッジ講座は、入学までに多くの学生が経験してきたであろう「受験のための勉強」とは一線を画すプログラムである。受講生側のとまどいや不適応はなかったのだろうか？
武内氏によると、出席率も反応も非常に良く、講座が進むにつれ生き生きとしてくる学生も少なくないという。事実、全プログラム受講後のアンケートでも、約8割の学生が「受講して良かった」と答えている。「とかく『主体性に欠ける』『やる気がない』と批判されることが多い昨今の大学生ですが、楽しくて、自分のためになる講義なら出席するし、課題にも積極的に取り組むことが証明されました」と、武内氏はうれしそうに語る。
この成功を受けて、スタート当初は「大学教育でそこまでやる必要があるのか？」と傍観気味だった教員たちにも変化が起こり始める。通常の講義やゼミの中に、バズセッション（何にもとらわれない自由闊達な意見交流）やロジカルシンキング（「なぜそうなのか」という理由づけをし、それをきちんと伝えることによる論理的思考法の訓練）といったエンカレッジ教育の手法の一部を導入する動きが出てきたのだ。03年2月には、教員を対象にしたエンカレッジ教育の講演会も開催。エンカレッジ教育が学生と教員双方に徐々に受け入れられるようになった。 |
| 将来はテキスト化して広める準備も |
04年度から、エンカレッジ教育は「総合教育推進機構」という学部横断的な組織に移管され、選択必修科目として単位認定する方向で検討が進んでいる。すでに外部からキャリアコンサルタントや就職コンサルタントなどを招聘して講師の増員も図っており、同講座を核としたキャリアデザインにつなげることが目下の目標となっている。
また一方で、同大学は、エンカレッジ教育を通して他大学との連携も積極的に進めていこうとしている。「学生の意欲向上は、全国の多くの大学が抱えている共通課題です。本学は日本の大学におけるエンカレッジ教育のパイオニアとして、普遍性をもたせていく使命があると考えています。松山大学や中央大学など他大学への出張講義も実施していますし、開発したプログラムもテキスト化して、広く使ってもらえるように準備を進めています」（武内氏）。
大学を取り巻く環境や社会からの目が厳しさを増す今日、一私立大学が投げかけたエンカレッジ教育という新たな教育手法が、今後大きな広がりを見せるかもしれない。 |
