特集 満足度を高める学生支援
高知大学
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正課外・学外のイベントをモチベーション向上に活用
 「自律創発型ゼミ」には、この他にも学生のモチベーションを高める仕掛けが講じられている。年1回、大学が行っている「プレゼン・フェスタ」もその一つだ。これは、10分間の持ち時間の中で、学生が「自分の伝えたいこと」を様々な手段で表現し、テーマの着眼点や発表方法、知識の深さなどを、大学関係者や学外の企業関係者が評価するイベントだ。人文学部就職委員会委員長でもある池田教授の発案で、表現力向上などを目指したキャリア支援の一環として、2年前から同委員会が学生に企画を任せて開催。02年度からは学外にも門戸を開き、近隣大学の学生も参加するなど規模が拡大しつつある。
 ゼミでは、フェスタへの参加を目標の一つとして掲げ、開催の数カ月前から授業の中でそれに向けた企画立案も行う。さらに、高知県が学生対象にビジネスアイデアを募集する「ヤング・ベンチャー」、東京の大学生が主催する「ビジネスアイデアコンテスト」「政策立案コンテスト」への参加なども推奨。正課と正課外、学外の活動を連携させ、学生の意欲を高めていこうというわけだ。
 02年4月に、1年生950人を対象に学びのモチベーションなどに関して行った調査では、自分でやりたいことを見つけたり、自発・継続的に物事を学ぶことにあまり積極的でない学生像が浮かび上がった。「ゼミは、一つの枠組みの中で企画・表現・実行の能力が養えるため、学生の現状に対して有効なシステムだと考えています。それによって学生が変わっていく様子を周囲に見せることで、今後はもっと学内に広げていきたい」と、池田教授は話す。
 ゼミの成果は、S・O・Sのスタッフ構成と活動の質にも大きな影響を与えた。「ゼミを経験した学生のスタッフ参加が急増し、活動も受け身の姿勢から能動的なものへと変化しました」(石筒助教授)。
 活動場所も学外へと広がった。近隣の田野町の依頼で、小学校の授業でパソコンの使い方を教えたり、学校教職員向けにIT講座を開催。小学生向けの授業では、画像の処理操作を覚えてもらうために、スタッフが動物園で撮影してきた写真データを使って動物のクイズを出すなど、様々な工夫をこらした。
 交流の成果は、スタッフの発案で小学校の卒業記念CD-ROMにまとめられ、生徒全員に配布された。これらが契機となり、02年4月、田野町と同大学間で研究・教育に関する協定書が締結された。
 さらに、他の地域からもパソコン教室の開催を依頼されたり、大学側から高校生向けの大学プロモーションCD-ROMの制作を任されるなど、活動の幅は広がっている。こうした学内外、特に社会からの評価は学生に達成感をもたらし、自主性の向上という設立目標も達成されつつあると池田教授は見ている。
 「大学に進学するのが当たり前の社会になり、学習意欲の高い学生は少なくなりました。学習意欲が生きる力にもつながりますが、それが低下しているところにいくら知識を積み上げてもだめ。低年次の早い段階で、学生の意欲を高めることが大切だと考えています」。
 ゼミ受講生やS・O・Sスタッフの今後に両教授は注目している。
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