| Column 教学部学生生活支援室 東海大学 |
学生生活の総合案内業務から
学生の意見をフィードバックする |
| 文系理系あわせて8学部を設置する東海大学の湘南キャンパスでは約2万4000人の学生が学ぶ。数年前まで学生に対応する窓口が複数に分かれ、「どこに相談していいかわからない」「たらい回しにされた」などの学生からの不満の声もあがっていたという。こうした状況の改善を目的に「学生生活支援室」は開設された。 |
| 学生をたらい回しにしない“よろず相談所” |
2001年10月、東海大学は湘南キャンパスに学生生活を総合的にサポートする学生生活支援室CLIC（Campus Life Information Center）を設置し、02年度4月に学生相談の窓口をオープンさせた。ここでは大学生活に関わるすべての情報を提供する総合案内・相談窓口としての業務のほか、学生の考えや悩み、要望などの情報を吸い上げ、対応を検討。学生にフィードバックするなど、教育改善や大学全体のサービス向上を図る方針だ。
CLICの相談受付時間は、月～金曜日の9時から17時、土曜日の9時から16時を原則とし、非常勤勤務を含めて5人のスタッフが学生の相談にあたる。
学生生活支援室の曽田成則室長は「CLICは、いわば、学生生活のよろず相談所です。学生の悩みや疑問点には何にでも応えるという姿勢で運営しており、相談内容は学業や日常生活でのトラブル、心の悩みなど、多岐にわたります。こうした相談には、スタッフがその場で応えることを原則とし、届け出書類に関わる手続きや学生相談室のカウンセラーや健康管理室の医師が担当すべき問題を抱えている場合などは、専門の部署に案内するようにしています」と説明する。
こうした業務には他部署との連携が不可欠で、スタッフは学生に対応しながら学内や他部門、大学業務全体への理解を深める。また、学生指導や障害者支援の研究会、民間の相談員の講習会などを受講し、適切な対応ができるよう心掛けているという。「われわれはもちろんプロのカウンセラーではありませんから、内容によっては直接、解決してあげることはできないかもしれない。しかし、親身になって話を聞くことによって、何らかの解決策を見いだす手助けができればいいと思っています。また、キャンパスの道案内や苦情処理など、さまざまな相談を一括して引き受けることにより、他部署では専門業務がしやすくなり、結果として学生支援の向上につながればいい」（曽田室長） |
| 学生の考えを否定せず自分で決断できる情報を提供 |
| CLICが02年度に受け付けた相談は7786件。その取り組みは学生の口コミによって次第に認知されるようになり、開設した02年度4月に受けた相談は1294件だったが03年度の4月には2194件と倍増した（図表1）。学生が出入りしやすい雰囲気をつくるため、室内にはBGMを流したり、カウンターに花やキャンディを置くなどの工夫がみられる。最近では、学生同士の待ち合わせ場所にもなっているという。留学生からの相談も多く、1人の留学生の相談がきっかけで留学生同士や日本人学生へと交流の輪が広がっていった。 |
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| 相談内容をみると、道案内や施設利用についての「その他の相談」が59.4％と最も多いが、履修の仕方や授業についてなど、「学業に関すること」が13.6％、アパート・下宿やアルバイトなど「生活に関すること」が10.0％と続く（02年度実績）（図表2）。相談内容には月ごとの傾向があり、4月は1・2年生を中心に履修登録・Web登録の仕方、5月はクラブ活動、6月は転学部の相談など、7月は夏休みを前にアルバイトや留学、8月には夏休みで自分を見つめる機会が多くなるためか、生き方や心の悩みに関する相談が増えるという。 |
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「どんな内容であっても、学生の考えを否定するようなアドバイスはせず、学生が自ら結論を導き出すことができるよう必要な情報を説明します。転部の相談などは学生の進路にも関わる重要な問題ですので、将来の筋道を具体的に話してあげることも必要です。親には相談できないが自分の不満や考えを話す場がほしいという場合もあり、学生は話すことで満足したり、新たな目標を見いだし、納得することも多いですね」
曽田室長は学生一人ひとりとの会話のなかから、人の顔をみて話すことができないなど、学生のコミュニケーション能力の不足を感じていると話す。なかにはスタッフに話しかけるきっかけがつくれずにいたが、職員が声をかけると、堰を切ったように話しだす学生もいるという。 |
