| Report-4 |
4年生が3年生をゼミ形式で指導し
生の情報と体験を伝える |
| 厳しい就職戦線を勝ち抜いた4年生は、就職指導において重要な情報源であり、後輩と同じ目線で話のできる人的資源でもある。聖学院大学では、その4年生有志が「絶対就職するための研究会」を組織し、3年生の指導にあたっている。個別対応によるきめ細かな指導が好評なだけでなく、メンバー自身の成長にもつながっている。 |
| ガイダンスの実践編で4年生の体験が生きる |
| 聖学院大学では、就職希望者の就職率が例年95％前後と、全国平均を上回る実績を挙げている。これを維持するため、キャリアサポートセンター（以下センター）は、ガイダンスや配布する冊子の内容を毎年見直し、改編している。特に3年生対象のガイダンスは、回数の多さときめ細かな指導が特徴だ（図表）。 |
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今年度からは、第1回のガイダンスで大学生活2年間を振り返った自己PRを記入させた。全く書けなかった学生のものは所属するゼミの教員に渡し、指導を促した。学生に就職を自覚させる時期を早め、教員に就職を意識した指導をしてもらうためだ。また、一般企業と幼稚園・保育園・福祉施設では就職活動の時期や内容が異なるため、ガイダンスはこれら2コースに分けて行うことにした。
後期のガイダンスは10月からほぼ毎週、水曜日の2・3限目に実施。2限目は外部の専門家や卒業生の講師が全体的な説明をし、3限目は少人数のグループに分かれ、ガイダンスの理解を深め、教えられたことをすぐに実践する場となる。この3限目で指導にあたるのが、内定を得た4年生有志による「絶対就職するための研究会」（以下絶就研）だ。1999年度に発足し、03年度で5期目を迎える。キャリアサポートセンターの岡村紀男所長は発足のきっかけをこう語る。
「年を経るごとに職員は経験豊富になり、充実した指導ができるようになりました。一方で、加齢によって、職員と学生とのジェネレーションギャップは大きくなります。また、服装や身だしなみ、男女間の違いなど、就職活動を経験していなければ適切な指導ができないこともあります。そうした問題に同じ目線で対応できる4年生に協力してもらうことにしたのです」
同大学ではオープンキャンパスの司会やコンピュータ基礎の学習をアドバイスするチューター制度など、学校行事や学内の業務に積極的に学生を参加させている。「大勢の前で話をしたり、学年を超えて指導したりと、いろいろな体験をさせることで学生の成長を促しています。こうした校風が『絶就研』の土台にもつながっているのでしょう」と政治経済学部教授の柴田武男就職部長は分析する。 |
| 「絶就研」は学生の自主運営方針や内容はメンバーが決定 |
「絶就研」のメンバーは毎年15人前後で、03年度は1学科2人×6学科の計12人だ。大半の4年生が就職活動を終える8月に、センターの職員がそれぞれ担当する学科の学生から候補者を挙げ、最終的にはセンターの職員全員で決める。十分な準備をして就職活動に臨んだ学生や、就職活動を通して成長した学生が選出の対象となる。8月下旬までに本人に通知し、受諾した学生は9月下旬に指導のための研修を受ける。
「後輩からどんなに相談を受けても、相手と代わってあげることはできません。距離を保ちながら指導することが重要です。研修ではそういった指導のテクニックなどを教えます」（岡村所長）
その後、ガイダンスの3限目で何を行うのかをメンバーで話し合う。2限目の内容と就職活動の手引書となる『就職への道』に沿って指導内容を決める。例えば「エントリーシートを書く」では、2限目で書き方のポイントを説明し、3限目で実際にエントリーシートを書かせる。他の学生が書いたものとの比較やメンバーの体験をもとに問題を理解させるなど、具体的に指導する。その際、エントリーシートはどんなフォームを使うか、どんなアドバイスをするかといった内容を決めるのだ。この内容に職員は一切関与しない。第3期のメンバーで、一般企業勤務を経て同大学アドミッションセンター職員となった小嶋麗氏は当時をこう振り返る。
「最初は指導方針をめぐって、何度も議論をしました。その結果、会社選び、自己分析、エントリーシートの書き方、面接の指導に力を入れることにし、『絶就研』オリジナルの冊子を作り、それをもとに指導にあたりました」
また、メンバーは受付で3年生に挨拶し、ガイダンス中は壁によりかかっている学生には声を掛け、空いている席に座らせて真剣に耳を傾けさせる。
「コミュニケーションの基本である挨拶がきちんとできる学生は、内定にも結びつきやすい。挨拶をしっかりできるよう積極的に声を掛けてもらうようにしています」（岡村所長）
このほか、メンバーはガイダンス時間外にも個別相談に応じ、センターのホームページにある専用の掲示板でも質問に答える。 |
| 体験談を通して、答えではなく考えるヒントを与える |
センターの就職指導の方針は、学生に自ら考えさせ、行動させることだ。これを「絶就研」にも徹底させている。
「就職活動に正解はありません。その場その場で適切な対応が迫られます。重要なのは、自分の頭で考え、自分の足で動き、自分の言葉で語ることです」と、柴田就職部長は強調する。「絶就研」も自分の体験など、いろいろな事例を後輩に伝えるが、最終的な判断はしない。「あなたならどうする？」と学生に問いかける。
小嶋氏は、自動車業界を志望する学生から相談を受けたとき、自動車メーカーだけでなく、販売業や中古車などの関連企業があることを話し、学生自身で調べるように促した。小嶋氏自身、先輩の体験を聞き、迷いを払拭できた体験があるという。
もちろん、最初から思うように指導できるわけではない。ガイダンス終了後に毎回反省会を行い、問題点や課題を話し合う中でだんだん意識が変わっていったと、小嶋氏は言う。
「最初は試行錯誤の連続でした。でも、後輩に頼られるうちに、何を伝えればいいか、何をさせればいいのか、指導とはどういうことなのかがつかめたと思います」
「『絶就研』の卒業生には入社式で新入社員の代表として宣誓する人が何人もいます。活動を通して、スキルが磨かれるという側面もあるのです」と、岡村所長は胸を張る。 |
| 就職率の底上げを図るため入学前教育などを拡充 |
「絶就研」とともに行う就職支援では、相談をする側と受ける側の両方が成長する。しかし、有益なガイダンスも学生が出席しなければ意味がない。同大学には就職希望も進学希望もしない学生が毎年約3割いる。さらに、就職後数年間での離職率も年々上がっている。こうした実態に、柴田就職部長は危機感を強めている。
「就職活動中や就職後も、嫌な思いをすることはたくさんあるでしょう。しかし、そこで逃げ出さずに社会としっかり向き合うことで、人間は成長します。就職に無関心な学生をいかに動かすか、試行錯誤しています」
推薦入試合格者を対象とした入学前準備教育や1年生対象の就職ガイダンスなどを行い、早期から就職進路意識の醸成に力を入れ始めた。また、卒業生の転職や再就職活動も本格的に支援。卒業生なら誰でも在学中の学生と同様に相談を受け、就職のあっせんを行う。在学生向けの支援が成果を挙げているため、今後はこうしたプログラムを拡充していく計画だ。 |
