| Report-5 |
現役企業人の講師が
個性PRのための面接術を徹底指導 |
| 獨協大学が3年生の希望者を対象に2002年度から実施している「就職ゼミ」は、充実した面接指導を最大の特色とする。講師は、実際に採用に携わった経験のある人や現在も携わっている人など現役企業人が務める。小手先のテクニックやノウハウの伝授ではなく、「自分が本来持っている個性や魅力を、本番で最大限に表現するための技術」（キャリアセンター職員）を、徹底的に体得させる。講義編と実践編の2段構えのゼミは有料だが、初年度の受講者の内定が好調で満足度も高く、今年度は受講希望者が急増。他大学の就職担当者からも関心を集めている。 |
| 従来のガイダンスに加え応用編として導入 |
獨協大学では今春、就職課をキャリアセンターに改称した。職員が企画して講師も務める3年生対象の「就職ガイダンス」は就職課時代から実施しており、現在も続けている。年間7、8回の同ガイダンスはいわば基礎編で、就職活動に臨むための心構えを伝える。本年度は、4月中旬に開いた第1回のテーマが「就職活動スケジュール」「キャリアセンター活用法」。その後「自己分析・自己表現」「履歴書・エントリーシート」などのテーマが続く。10月には、4年生を対象に「あきらめるのはまだ早い」と題し、企業からの追加募集などについて話した。
「就職状況が厳しさを増し、大学の就職支援に対する学生のニーズが多様化する中、より深くきめ細かい指導を希望する人を対象にした応用編も必要だと考え、去年から就職ゼミを始めました」。同センターの山平透課長補佐はそう説明する。「本学の学生に共通する特徴として、真面目でこつこつ努力するという点が挙げられますが、これを裏返すと、おとなしくて自己主張が苦手という弱点になる。そこでゼミでは、面接指導に特に力を入れることにしました」。
企業の採用担当者とのネットワークを持つ業者がプログラム開発に協力、講師も紹介している。初年度は、東日本にある第三セクターの鉄道会社の幹部が講師を務めた。キャリアセンターでは「現場のリアルタイムの情報や問題意識を持っている現役企業人というところがポイント。学生の身内ともいえるわれわれ職員よりも、外部講師の方が社会の現実や採用する側の本音を話せるので、緊張感が生まれます」と説明する。
夏休み前から始まる全5回の講義編では、企業が求める人材、経済新聞の読み方、経済動向から注目株の業種や企業を見つける方法などを解説。面接の心構えについては特に詳しくレクチャーする。面接官は学生のどこを見ているか、どうやれば最大限に自己PRできるのか、まずは座学で理解してもらう。 |
| 圧迫面接の狙いを理解し対応をトレーニング |
これを受けて10月後半から年明けにかけて全6回のプログラムで開講される実践編では、マンツーマンの模擬面接やグループディスカッションで、採用試験の実際を学ばせる。キャリアセンターの梶原祐子氏は、「自分がその企業にとっていかに有用な人材であるかを示すことが就職活動では最も重要で、面接は最大のアピールの場になります。就職ゼミの実践編は、面接を突破する力をプロにつけてもらうことが目的です」と説明する。
センターの職員もゼミには毎回同席する。「さすが現場の方だなと感心するのですが、一人ひとりの隠れた長所を見つけ出すことに長けており、そのアピール方法も具体的に伝授してくれます。われわれにとっても非常に勉強になる」（山平補佐）。
面接官が学生を言葉で追い込む「圧迫面接」は何のために行われるのか、どう対応すればいいのかも指導する。論理的な言葉のキャッチボールができるかを試されるわけだが、クラス全員の前での講師との厳しいやり取りで、泣きそうになる学生も出てくるという。そんな場面を経験しておくことで、平常心で本番に臨めるように、との狙いがある。
同センターが「就職マニュアル本にも載っていない裏技が出てくる」と強調するゼミの内容の一例として、面接でのテーマの選び方がある。山平補佐は「例えば勤勉さや協調性をPRするため、多くの学生はアルバイト経験を例に出しますが、面接官にとってはありきたりで訴える力が弱くなる」と指摘。「よほど特異なアルバイトをした学生なら別ですが、家族関係などその人にしか語れないテーマを選んだ方がいい、といった具合に説得力ある話がいくつも出てきます」。
初年度の受講定員は80人で、受け付け開始から2時間半で締め切った。内容についても好評で、複数内定を得た学生も目立つという。学業成績がずば抜けて優秀というわけでもない学生が、7社から内定をもらった例も。そういう学生は、「就職ゼミのおかげで自分の良さを見てもらうコツが分かった」「本番の面接で動揺することがなくなった」と話すなど、自信をつけているようだ。 |
| 講義編では当初定員の1.5倍を受け入れ |
今年度は、講師に生命保険会社のライフプランナーと旅行会社の経営企画室長を加え3人に増強。いずれも40代前半で、それぞれが転職経験を持つ。「複数内定」をゼミの目標に掲げることについて同センターは、「選択肢を数多く手に入れ、その中からより理想に近いものを選び取ってほしいから」と説明する。
就職ガイダンス特別編として5月に開いたゼミの説明会では、前年度に受講した4年生が成果を紹介し、後輩たちの関心を集めた。その結果、講義編には、60人×5クラス計300人で予定した募集定員を大きく上回る440人が申し込んだ。結局、1クラスを80～90人に増やして希望者全員を受け入れることになった。3年生の4.5人に1人が受講した計算で、7割を女子学生が占めた。他大学の就職担当者も見学に訪れたという。
講義編と実践編は、受講者を別々に募集する。「講義編は大人数でも何とかやれましたが、マンツーマンの模擬面接などが入ってくる実践編は、1クラス30人が限度です」との考えから、定員330人で応募し、希望者の多いクラスは、やむをえず抽選で絞り込んだ。
受講料は、講義編が1万円で実践編が1万5000円。教室だけでなく、メールで講師に相談をする学生もいるという。 |
| 気軽に足を運べるセンター目指しレイアウトを刷新 |
同大学では「就職ガイダンス」「就職ゼミ」以外にも、職業観を養い就職について主体的に考えてもらうための支援を行っている。正規授業である全学総合科目では、1年生を対象に「キャンパスライフと仕事」を開講。この科目は、個性に合った生き方をデザインし、充実した学生生活を送ることを狙いとしている。2年次からはインターンシップがあり、いずれもキャリアセンターが支援している。自己分析によって適性を把握した上で進路について考えさせるため、今年度は1年次から3年次にかけてそれぞれ「自己発見レポート」「自己プログレスレポート」、就職適性検査「キャリアフォーカス」を実施した。
「完全に自前で作るものと外部のノウハウを借りるものを使い分け、中身の濃い就職支援に努めています」と山平補佐。
卒業生に後輩の就職活動を支援してもらうシステムもできた。キャリアセンターが同窓会と連携、協力したいという卒業生を募り「就職応援団」として登録する。学生はその名簿の中から、自分の希望する職種や企業で働く先輩を見つけ、メールで連絡を取ったり、訪問して相談に乗ってもらうことができる。
就職課からキャリアセンターへの改称の背景には、狭義の「就職活動」の支援から、就職に対する自覚と関心の喚起という、使命の変化があった。1年次でも気軽に足を運んでもらえるよう、このほどオフィスのレイアウトも見直した。
職員と学生が細長いカウンターで仕切られ、学生が訪れると奥から職員が出てきて対応する、という多くの大学の就職課等で見られる光景は一変。職員のデスクはカウンターとひと続きになったL字形で、椅子を少しずらせばそのまま学生と向き合える。従来のカウンターに比べかなり低く、独立したL字がいくつもあるため、職員と学生の間に敷居がない開放的な雰囲気になっている。 |
気軽に足を運んでもらえるよう
レイアウトを工夫したキャリアセンター
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学生は、職員の作業を中断させるという遠慮を感じる必要がない上、前回の訪問時と同じカウンターに行くなど、自分で職員を選ぶこともできるようになった。目当ての職員に先客がいれば、そばにあるパソコンで求人情報を見ながら待つことも可能だ。
梶原氏は「就職活動といっても一体何をやればいいかわからない、そんな手探りの状態でもいいから、まずは気軽にセンターに足を運んでほしい。そして、来れば必ず何かが得られる場所にしたい」と話した。 |
